突然の出来事に一瞬声が喉につまる。

「っ、カミュ、」

すぐに一体どうかしたのかと言いかけた私に、カミュは眉を顰めたまま言った。


「他に好きな男でもできたのか」
「…っな、んで」

顔が赤いと言ったカミュが、私の手を引いたまま顔を近づけた。
彼はふっと冷たく笑うと、いつものカミュの口ぶりからは想像できないほど冷たい声で言う。

「誰か、男のことでも考えて」
「違う!!」


考えるより先に叫んでいた。

どうやらカミュは勘違いしているらしい。
それも早く解かなければ面倒なことになる誤解だ。

だが私には生憎上手く誤魔化すような高等な対話能力など持っていない。さらに言えば、私の頭が単純なせいだろうか。まるでひねった様子のない言葉が、そのまま飛び出していった。


「カ、カミュが私に好きって言ってくれる夢を見たの!だからそれでっ、て、照れたの!言わせないでよ、もう!!」

恥ずかしかったのだからと叫ぶように言った私に、カミュは目を真ん丸にした。そして呆気にとられたのか、しばらくそのまま黙り込む。私のほうはと言えば、カミュに真実を告げたせいで余計に顔の熱が高まった。


「そ…、そんな顔しないでよ、一人で騒いで、私、馬鹿みたいじゃない」

最期のほうは消え入りそうな声だった。
言ってしまったという後悔の念と、羞恥に、掴まれていた腕を振り払った。そのままシーツを頭から被ることでなんとか耐えようとする。そんな私にカミュが声をかけた。


「…そのために、顔を赤くしていたのか」
「ただの夢なのに、赤くなるなんて変なのは分かっているから!そのことに関しては何も言わないで!」

穴があったらさらにマントルまで掘り下げて隠れてしまいたい。
シーツの中でくらくらとする意識の中、なんとかそれに耐えようとしているとカミュが呟くように言った。


「…不安に、させていたのだろうか」

3/5
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