「あー!」なんて、頭を抱えて間抜けな姿で呻いた。瞬間、聞きなれた大好きな声が、私を呼ぶ。

「なまえ?」
「ひっ!」
「…どうした?」

開け放したままだった扉から顔をのぞかせたカミュの顔を見た瞬間、さらに頬に熱が集まった。

彼の髪がさらりと肩からこぼれるのとほぼ同時に、先ほどの夢が脳裏によみがえる。


好きだ、と、私に言った、彼の言葉、


「…っなななななんでもない!!」
「しかし、顔が赤い。熱があるのでは…、入るぞ」
「だっだめ!入っちゃダメ!」


慌てて両手を振って否定した私を、カミュは僅かに訝しむような目で見た。

「どうかしたのか」
「なんでもないからっ!大丈夫だから!!」


頼むから今は近づかないでくれと思った。

カミュには申し訳がないが、今彼の傍に寄ったら私の顔が爆発する。
そしてやはりそれ以上にカミュと顔を合わせることが気まずかった。あんな夢を見たなんて、彼にだけは知られたくない。


だがカミュは何を勘違いしたのか、眉を寄せたまま「私が何かをしてしまったのだろうか」と言った。

それだけでも私を焦らせるのには十分だったのだが、言葉と相反するように顰められた彼の顔が恐ろしくて仕方がない。


おかしい、


本当に変だ。
どうして、この人は怒っているのだろう。


「カ、ミュ?どうして怒っているの?」
「怒ってなどいない」
「怒っているわ」
「違う」

寝台の上に半立ちになった私のもとまで、カミュは大股で近づいた。
すぐに手をとられ、触れた熱に心臓がまた一つ跳ねた。

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