お風呂上りにアイスを食べながらぼーっと雑誌を読むのが好きだ。つまらないことしか書けないライターにわざとらしいコメント、何が良いのかまったく分からないファッション。そういったものをぼんやりと見て時間をつぶす。最高につまらない。でもこの後大好きな人が傍に来るのを知っているから黙ってそれを待つ。

ふいに、お風呂から出て来たサガが私の隣に座った。今日も信じられないくらい長風呂だった。
お風呂上りの高い体温がそっと私の肌を掠める。

「なまえ」
「んー?」
「なまえ、体を冷やすといけないからきちんと袖のある服を着ろといつも言っているだろう」
「だって暑いんだもん」

お風呂上りのノースリーブ短パンは最強だと思う。火照った体にちょうどいい。長い袖ありのパジャマなんて着ていられるか。

「上着を羽織れ」
「やーだー」

上着を差し出してきたサガの手から逃れるようにソファに倒れこめば、サガが呆れたような顔をした後に私の上に上着をかけた。

「いいか、風呂上りに体を冷やすということは…」
「体に悪いっていうんでしょ!でも暑いんだからしょうがないと思う」
「しょうがなくない」

腕を組んでそう言ったサガに上着を投げれば彼が眉を潜めてこちらを見た。

「なまえ!」
「きゃー!」

少し怒ったのか語調を強めたサガに驚いてソファから落ちる。それを見た瞬間今度は慌てたような声で私を呼びなおしたサガに笑いが漏れた。

「あっはっは…!サガってば…っ、優しすぎだよ!怒った直後に心配って…!」
「いいか、なまえ。怒っているのではなく心配しているんだ。風邪などひいたらどうする?そしてその時私が任務で聖域にいなかった場合誰がお前の世話をするのだ。デスマスクやカノンに任せるなど心配すぎて論外だ。だがそれはさておきものを投げることは感心しない」
「はーい、ごめんね」
「分かればいい。…そして分かったのなら、きちんと着ろ」
「それはやだって。暑いもん」
「…いいか、暑いのは分かる。しかし体を冷やすのは毒だということもわかるだろう?それに、…その、だな」

突然言いよどんだサガが私から目をそらした。よく分からないが彼の隣に座りなおした私の方を、サガはやっぱり見ないでぼそりと呟いた。

「目に毒だ」

口元に浮かんだ笑みをそのままに、サガの首に手を絡める。

「サガ、サーガ、こっち見て」
「嫌だ」
「ちゃんと私を見てどこら辺が目に毒なのか説明してほしいな」

にやにやと笑いながら言った私をちらりと見たサガが顔を引き攣らせた。


「ねえ、私サガになら何をされても構わないから、こんな格好だってしているんだよ?」


私の言葉に目を丸くした後に目を伏せたサガの瞼に口づけた。彼が眉を潜める。

「お前は…、悪魔のような言葉を吐く女だな」
「小悪魔って言って!」
「いいや、大魔王だ」

そう言ったサガが私の頬に手を添えた。大きくて暖かなそれが首に降りる。

「誘ったのはお前だ」
「歓迎したげる」

その言葉を言い終わるや否やソファに押し倒される。彼の長い金髪が私の頬をかすめた。

「サガが好き。だから何をされてもいいと思っているのよ?分かっている?」

私の言ったそれにサガは口角を上げて、さらに言葉を続けようとした私の口を塞ぐ。あとはもうソファの上で溺れるだけだ。雑誌が床に落ちてばさりと音を立てたのをどこか遠くのことのように聞きながら目を伏せた。


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12/02/29 どてかぼちゃ
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