十二宮を駆け下りて、聖域の入り口までただ走った。

夜の澄んだ空気が頬を撫でて心地よかった。いつもより大きく見える真っ白い月と、空一面に散りばめられた星の下をただ走った。


森の小道を抜けて、小川の横を走り、そうしてたどり着いた森の端で立ち尽くす。

少し上がった息を抑えて顔を上げた。しばらくしんと静まり返ったその場所であたりを見渡す。風が森の木々をざわりと揺らす。

ふいに、小宇宙を感じて顔を上げた。遠くから歩いてくるサガを見つけた瞬間、耐え切れずに地面を蹴る。

「サガ!!」
「…なまえ?こ、こんな時間にこんな場所で一人で何をしている!」

少し慌てながら駆け寄ってきた彼に私はそのまま飛びついた。

「っ?」

受け止めてくれたサガを見上げてともかく口を開いた。言いたいことは、全部まとめて考えていたはずなのに、そんなことなど全部どこかへ行ってしまって、とにかく口から勝手に言葉が溢れた。

「サガ、ありがとう!お帰り!待っていられなくて迎えに来たの!!私を迎えに来てくれてありがとう!冥界まで行って、大変だったでしょ?ごめんね、ありがとう!」

ともかく言いたいことを一気に言い切った私に少し驚いた顔をしたサガだったがやがて表情を緩めた。

「…いいや。なまえこそこんな場所までまさか迎えに来てくれたのか?」
「うん、早く会いたかったから」
「そうか。では、一緒に十二宮まで帰ろうか」

差し出された大きな手を取って彼の横に立った。
冷たい夜の空気の中で、サガの手がとても暖かかった。

口元がにやける。
隣を歩くサガを見上げて、頬まで緩む。
幸せだった。

けれどそんな顔を見られるのが恥ずかしくて俯いたとき、サガが私を呼んだ。
夜の静寂に満ちた森の中で、サガの声はよく私の耳に届く。

「…その…、本当に、私で良いのか?」

その言葉の意味が分からずに首を傾げる。だがすぐに気が付いた。彼を、好きだと言ったことか。

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