目があったとき、その青年は美しい顔を歪めて私とアテナを睨み上げた。神官が彼に何かを言って、それでも彼の視線はずっと私にあって、神官の話が終わったときに彼は嘲笑するように私に言った。

「鳥人女め」

それが出会いだった。
鳥人女。
初めて会ったとき、あの人は私にそう言った。
アテナさえも目を点にして、周囲が慌てふためいて彼を押さえつけようとする中、私は初めて心の底から笑った。

あのアテナが、茫然とした顔をしたことも、周囲のいつも取り繕った顔しかしない神官や巫女たちの表情の変化が面白かったのも確かだが、何より彼の言うとおりだと思った。

私にはほかの人間にはない翼がある。
鳥人、まったくその通りだ。変な女だ。

きっと今までも多くの人間がそう思ったに違いない。けれど誰もそれを口にしなかったし、私に対して言うことなど考えもしなかっただろう。
それは、私が勝利を司る女神だったから。

下手なご機嫌とりばかり。
嘘に満ちた褒め言葉。

そんなものはいらなかった。

彼は、それらを私には与えてくれなかった。
本心で私を侮辱したのだ。それは主と従者の関係ではありえない。神と人間の間でも有り得ないのだと誰もが信じていた。けれど、彼はそんなことなど気にしなかった。それはつまり、立場の対等だ。彼は私を勝利でも女神でもなく、ただ目の前にいる一人の女として私を見た。

それが、私は嬉しかった。今まで私は対等を持たなかったから。

始めは興味だった。それは次第に友愛に変わり、そして愛情になる。

愛していたんです。
心の底から、本当に!
けれど彼は聖闘士で、私はそれに守られる女神だった。
私には何もできなかった。勝利を司るだけの私には彼に勝利を与えてやることはできなかった。

聖戦で彼は死んだ。
夕焼けの中でそれを私は見つけた。

聖戦で、ハーデスに逆らった聖闘士は永劫彼に魂をとらえられる。輪廻転生も許されず、未来永劫苦しみ続ける。

彼の魂を救いたかった。
彼の魂を助けたかった。

けれどやはり私には何もできなかったのだ!

それなら、
私という存在には、一体どれだけの意味があったのだろうか?

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