あほだ。
それか馬鹿だ。おたんこなす、意味ぷーちん、ちちんぷいぷい。

あれ、ちちんぷいぷいは違うか。


サガの小宇宙を近くに感じて走り出す。
こんなことをして何になるのかわからないけれど、ともかく距離を取ることができればそれで良かった。

…始めのうちは確かにそうだった。

けれどどんなに距離を置いても、会わなくても、私の気持ちに何も変化は訪れないのだ。

小宇宙を感じるたびに、胸が暖かくなる。
遠くに姿を見ただけでああ好きだなあなんて考えてしまう。

ふざけている。
私はどこの少女漫画のヒロインだ。忍ぶ恋?そんな私に似合わないものは語尾にかっこ笑とのしをつけて送り返してくれる。

どっちかっていうと私は少女漫画のヒロインの引き立て役だぞ!
よくよく思えかえせば、ずっとそうだった。友人たちが恋をしていく中で、一人恋愛に興味がわかない。その理由なんて知らないけれど、クラスの男子、社内の男性、友人、誰を見ても、友達どまりだった。

恋愛に興味ない体質なんだと、そんな体質があるのかどうかはさておきずっと思っていた。
だから友人たちの恋愛に手を貸すことはあっても、自分が恋愛するなんて想像したこともなかった。

「好きな人できたら協力してあげるからね!」

そんなお決まりのセリフを友人たちに言われても笑って返すだけ。


私には好きな人なんてできない。
ずっとそう思っていた。

どうして、だろう?

それはよく分からない。
好意は持っても、それは愛じゃない。
ずっとずっと昔、誰かを愛した気がする。でもそれは私の気持ちではないし、私のものでもなかった。…たぶん、自分でもよく分からないがそう思うのだ。
そして、私はその愛が怖かった。
幸せになれなかったことを心のどこかで理解していたから、私は誰かを愛するのがずっと怖かった。恋なんてしないままで良いと思っていた。

それに、愛や恋など一時の気の迷い、生殖願望の一端にすぎない感情だ。終わりのない恋愛などないだろうし、だから余計にそんなものは私には必要ないと思っていた。


なら、どうしてサガに恋をした?

それも、よく分からない。

だが恐らく恋愛というのはそんなものだ。ある日気が付いたらもうどうしようもないくらい好きになっている。些細な微笑みや、優しさに胸を焦がされる。そして一度自覚したらあとはもう坂道を転がり落ちるように一瞬だ。

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