「…ということで、私はこれより一か月間シベリアにてカミュの指導の下修行を受けることにします」

そう言った瞬間、沙織が目を丸くして手に持っていたカップを落とした。
あ、空でよかった!コロコロと転がったそれを視線で追った私を沙織が見る。

「な、なんですって?」
「一か月間シベリアで修業してくる!」
「すみません、おっしゃっている意味が分かりかねます」

顔を引き攣らせて額に手を当てた沙織に再度同じ言葉を繰り返せば、沙織はそれ以上この件に突っ込むことは諦めたのかカップを拾って私を見た。

「修行がしたいというのなら止めません。小宇宙の使い方を覚えて損をすることはありませんから。ですが、わざわざシベリアに行く必要はないでしょう」

聖域で行えばいいと言った彼女に全力で、それはもう首がもげるのではないかという勢いで首を振る。

「シベリアが駄目ならシチリアでもいいの!ピレネー山脈でも五老峰でも!!とにかく聖域から離れないと私の頭が爆発しちゃう!!」
「はい?」

そうだ、少しサガと距離を置くべきなのだ、私は!
それが、色々考えた結果私が出した結論だった。


しばらくサガと聖域から離れて心機一転してから戻ってくるべきだ。

その間に修行でもなんでもして、小宇宙をもっとしっかり使えるようにする。
それからもっとたくさんのことを見たり知ったりすることによってこの気持ちも入れ替えることができるのではないだろうか?

ともかくこれ以上聖域にとどまってサガの傍にいることは得策とは思えなかった。

このままいったらきっと、ぱーんってなっちゃう!頭がぱーんって!!なんでってそりゃあサガが好きすぎて、あの人のことを考えると顔に熱がたまって、きっとそのまま頭の温度が上昇して血管膨張してええと、それでたぶんよく分からないけど小宇宙的な何かがたぎってぱーんって!

それらをオブラートに包んで沙織に伝えれば、彼女は苦笑いを浮かべる。

1/4