青空の下をとにかく滅茶苦茶に走りながら、ようやく見つけた見知った姿に助けを求める。アルデバランとアイオリアだ。

アルデバランと約束をしていた通り、ロドリオ村に農作業の手伝いに行くと言った私にその時偶然一緒にいたアイオリアは目を丸くしたが、すぐに手伝おうと言って笑ってくれた。そんな彼らのもとへ駆け寄る。


「アルデバラン、アイオリア!へええるぷみいいいい!!メルヘンバキューンちゃんがあああ!!」


物凄い形相で追いかけてくると叫びながら走り回る私を見た二人が笑った。だが私からすれば笑い事じゃない。


「遊んで欲しいんだ、なまえに」
「さ、作業が進まないよ!うわっ」

追いつかれ、後ろから頭突きをされて地面に倒れこむ。そのままじゃれついてきたメルヘンちゃんの頭を撫でながら苦笑した。この子牛はとても可愛らしいが、作業が進まないのは笑えない。

「草むしりをしているとちょっかいばかり出してくるの!」
「随分と懐かれたものだな」

そう言って豪快に笑ったアルデバランがメルヘンバキューンちゃんを抱き上げて私の上から退かしてくれる。泥まみれになった服を掃いながら立ち上がりメルヘンちゃんに視線を合わせた。

「明日は暇だから、明日遊んであげるから今日は仕事をさせて!」
「………」

つぶらな瞳が私を見る。

「…さ、作業が終わってから遊んであげるから…」
「………」

僅かに瞳が潤んだ気がする。

「…わ、分かったよ!!今すぐ遊んであげる!!」

かかってきなさいと言えば、アルデバランの腕から降ろされたメルヘンバキューンちゃんが直撃してくる。結局押し倒されることになったのだが、それを見たアイオリアがまた明るい笑みを浮かべた。


「今は良いが、そのうちこの牛が大きくなった時には潰されかねないな」
「アイオリア!それ笑い事じゃないわ」
「どれ、手を貸してやろう」

笑ったアイオリアが手を差し出してくれる。
私と同じように土を弄っていたから泥まみれの手を取って立ち上がった。メルヘンバキューンちゃんの背中をわっしわっしと撫でながらお礼を言う。


「いいよ、大きくなったら今度は私がこの子の背中に乗せてもらうことにするわ」
「ああ、それなら問題はないだろう」
「だそうだぞ、子牛。なまえに乗るなら今だけだな」

そう言って笑ったアイオリアの言葉を理解したのかそうでないのかは知らないが、また子牛が直撃してくる。


「アイオリア!余計なことを言わないでよ!!」
「それはすまなかった」

子牛を抱き留めた横でアイオリアが笑う。
笑ったアイオリアが立ち上がって空を見上げ、目を細めた。アルデバランも空を見上げて「良い天気だ」と言って笑う。アイオリアがそれに頷いた後腰に手を当てる。

「いい天気だが…、崩れるかもしれないな」
「え?」
「あちらに雲が出始めている」

山間を指さしたアイオリアが「夕方から雨になるかもしれないな」と言って歩み寄ってくる。メルヘンちゃんを撫で始めたアイオリアに首を傾げる。

「こんな季節に夕立?珍しいね」
「この辺りは十二宮とは比べられないがそれでも少し標高が高いからな、天候も崩れやすい」
「羊や牛たちを戻した方が良いかもしれないな」

アイオリアの言葉に頷いたアルデバランもそう言って農具を片付け始める。向こうで作業をしていたロドリオ村の人たちも同じ考えだったらしくこちらへ歩み寄ってきて今日はもう終わりにしようといった。

慣れた様子で片づけをするアルデバランの隣で、アイオリアと四苦八苦しながら片づけを手伝う。決まった片付けかたがあるから慣れてしまえば簡単なのだが、慣れるまでが大変だ。

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