双児宮に完成したマフィンを持って降りる。

「サガー!見てみて、デッちゃんに教わったらマフィン作りに成功したの!」

そう言って発見したサガの背後から飛びつけば彼が驚いた顔をして振り返った。

青い青い目と視線が絡んで、それは確かにサガの顔をしてはいたのだが、…


「…えーと、どちら様でしょう?」
「誰だ」


サガじゃないと思ったのは間違いではなかったらしい。

サガが浮かべないような渋った表情で私を見下ろしたサガにそっくりのおにーさんを見上げた。
なんていうのだろうか、サガを学校で人気の新任教師と例えるならこの人の表情はヤンキーのそれだ。顔は似ているのだが、雰囲気が違う。恐らくサガではないのだろうことは容易に理解できたが、ここまでそっくりな他人がいるだろうかと首をかしげる。


「…あっ分かった!ドッペルゲンガー!!」
「…サガの知り合いか」

ぐっと顔を覗き込まれる。
反射的に身を引く。
彼がさらに覗き込んでくる。
さらに身を引く。そして壁にぶつかった。

何この状況と思っているときに、顔の横に手をつかれ逃げ場を失った。

「誰だ」
「なまえ、と申します…」
「…聖闘士か?」
「え?いや私は…」

なんて説明すればいいのだろうか。
勝利の女神だと言っても良いのか?それとも相手が誰だか分からないときは隠したほうが良いのだろうか、なんて思考に板挟みにされて悩んでいた時に名前を呼ばれた。

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