チュンと鳴いた雀が窓枠に止まった。

細々とした可愛らしい動作で部屋を覗き込んだ雀と目があう。

「………」
「……?」
「…ジュー!!」


まったく可愛くない声で鳴かれて飛びさられた。ええー何あの雀…。

沙織がそれにころころと口元を押さえて笑った。呆気にとられたままの私に、早々と平静を取り戻した彼女の今日の紅茶の茶葉はどこのなんだという説明を聞き終えた後に背伸びをした。うう、ばきばき。それから全身が痛い。

「あーっ筋肉痛…!」
今日が休日で良かったとソファに倒れこめば、隣で紅茶を注いでいた沙織が呆れたような表情を浮かべた。

「なまえの会社からここまで歩いて帰ろうとしていたと聞きましたが」
「アイオロス、マジ、ムキムキ、略してAMM」
「帰りが遅いから小宇宙を探ってみれば、電車にもバスにも乗っていないようだから何かあったのかと驚きましたよ」

紫龍に小宇宙を探らせながら車で迎えをやって正解だったと苦笑いを浮かべた沙織に笑い返した。

「いや、本当お世話になりました」

でも新しい発見(たとえば、可愛いカフェを見つけて今度行こうと思ったり)があったり、澄んだ夜の空気の中を歩いたりするのは楽しかった。
会社から城戸邸間でなくとも、今度また夜に散歩してみるのも良いかもしれないと思ったところにノックがされた。

「沙織さん、なまえさん!辰巳さんがケーキを焼いたって」

そういってちょっこりと可愛らしい顔をのぞかせたのは瞬君だ。
ほわほわとした笑みを浮かべながら「チョコレートケーキ」と言った彼に沙織も微笑む。

「では、少し休憩にしましょうか。氷河たちやサガやアイオロスも呼んでお茶の時間にしましょう」

その言葉に瞬君は微笑んで氷河君たちを呼んでくると言って部屋から駆けて行った。本当に可愛らしい子だな、なんて思っていると沙織が立ち上がった。

「私たちも行きましょうか、なまえ」
「うん、沙織」
「ところで、瞬も貴女をなまえと呼ぶようになりましたね?」

何かあったのかと問いかけられて首を傾げる。
沙織が聞きたいのであろうきっかけなどは何もなかった。たぶんあれは彼の気まぐれにすぎなかったのだろうから。何もないよと首を振れば沙織はそうかと言って歩き始めた。

(いったいなんだったのだろうか?)

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