「はくしょっ、ふぇ…っ、くしっ!あ、ムウ、くしっ」

扉を開けた瞬間聞こえたのは女神のくしゃみだった。

「随分と豪快なくしゃみですね、なまえ」
「あははっ、くしゅん!だってとまらない…っ、へくしっ」

なんて可愛くないくしゃみなんだと自分で自分に爆笑するなまえを見て苦笑した。本当に不思議な女性だと考えながら彼女の隣に歩み寄る。

「熱は測りましたか?」
「うん、38度くらい」
「また上がりましたね。どうぞ、アテネでスポーツドリンクを買ってきましたから」

そう言って手渡せば、なまえは礼を言って受け取った。そんな彼女の横になる寝台の傍に置いてあった椅子に腰を掛けて紙袋から果物を取り出していく。

「オレンジなどもありますが」
「いろいろありがとう、ムウ。後で頂くね」
「ええ。ではここに置いておきます。良く食べ良く寝て、早く良くなってくださいね」
「うん、ありがとう」
「それにしても良い天気ですが…、カーテンは開けたままで良いのですか?」

もし眠るのに邪魔なようだったら閉めておこうと言った私になまえは笑って首を振った。本人がそれでいいのなら構わないが眩しくないのだろうかと窓を見る。広がるのは真っ青な空だ。


しばらくそうして青空を眺めていたが、私があまり長居しても気が休まらずなまえのためにならないだろうと立ち上がり部屋をでることにする。なんにせよ熱が高いのだ。眠らせたほうが良い。目があった彼女に微笑んで、後でまた様子を見に来るからと言えばなまえは笑みを浮かべて礼を言った。

「おや、サガ」

丁度その時部屋に入ってきたサガと目が合う。彼は私がいるとは思わなかったのか少し驚いた顔をしたあとに薄く笑みを浮かべた。

「ムウ、悪いが少し二人にしてもらえるか?」
「ええ」

どちらにせよもう出るところだったのだ。何も問題はないとなまえにまたあとでと告げて部屋を出る。「すまない」と言ったサガに私も薄く笑みを返して、とりあえず一度なまえの容体をアテナに報告することにして神殿へ向かうことにした。

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