ハープを奏でながらぼんやりと思案する。

聖域からやってきているという勝利の女神。
小宇宙を探ってみたが、その大きさはとてもじゃないがハーデス様やアテナ、ましてや双子神の足元にも及ばないようなものだった。

ひょっとしたら黄金聖闘士や三巨頭のほうが巨大な小宇宙を持っているのではないかと思えるほどだ。ひょっとしたら小宇宙を抑え込んでいるのかもしれないが、その理由も知れない今、どうも彼女が勝利の女神とは思えなかった。


ポロポロとハープを奏で、小さく息をついた。

まったくよく分からないが、ハーデス様が彼女をこの冥界に呼び寄せただけでなく、双子神がラダマンティスを下がらせ、わざわざ出迎えに出向いたというではないか。最近冥界もようやく落ち着いてきたというのに何か、聖戦とは言わないが何かしらの変化が起こるのではないかと考えてまた小さく息をつく。その時扉が開いた。

「あの、…」
「…おまえは」
「えっと、ごめんなさい…迷子になって…」

小宇宙を感じることはできるが、入り組んだ冥界の中を行ったり来たりしているうちに綺麗な琴の音が聞こえて来てしまったと言った彼女を見る。東洋人らしい彼女は、ハーデス様の招いた

「勝利の女神…?」
「へ?あ、ああ…、すみません、ニケです。貴女は?」
何故か謝られ、それに拍子抜けしながらも冥界の顔として礼は弁えねばならぬと頭を垂れた。

「私はパンドラ」
「パンドラさん」
「パンドラで良い。ニケ、ようこそ冥界へお越しになられたな。心より歓迎するぞ。道に迷ったと言ったな、案内しよう」
「あっ、えっと、その…」
「何か?」

一瞬言葉に詰まった彼女が言いにくそうに視線を泳がせる。何かほかに用があるのかと彼女を見れば、ニケは少し顔を赤くしながら言った。

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