「双子座はここで待て」

低い声がそう言った。足を止めて振り返ればヒュプノスと名乗った金髪のおにーさんがじっとサガを見ていた。それにサガが少し眉を潜めて「できない」と返して口を開く。

「私は女神の護衛だ」
「いいや、ここで待て。ハーデス様に危害を加える可能性のあるものをここから先へ進ませることはできん」
「そちらこそ彼女に何かをするつもりでないだろうな」
「いいよ、サガ!大丈夫!ぱーっと挨拶してぱーっと戻ってくるから!えーと、閻魔様に!」
「…なまえ、閻魔ではなくハーデスだ」

オッケー牧場と言って親指を立ててみせれば、サガは些か不安そうな顔をしたが小さな声で大丈夫かと聞いてくれる。それに笑みを返して頷いた。「任せてであります、隊長!」「私は隊長ではないよ」ようやく笑みを見せてくれたサガに、では頑張ってくると告げてヒュプノスの指差した扉に向かった。

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