ふらり、ふらりと奇妙な足取りで歩くなまえはどうやら前が見えていないらしい。

当然か、頭からシーツをかぶっているのだからと彼女の行く末を眺める。
そろそろと両手を前に突き出しながらぶつからぬように歩いていた彼女が、実にうまいことに両手を抜けた柱に直撃した。


「へぶっ」
「…大丈夫、か?」

少し面白いから黙ってみていたことは言えないなと苦笑しながら彼女に歩み寄って手を取った。立ち上がらせてやれば、彼女は私の手をぺたぺたと触って「…サガ?」と聞いてくる。

「ああ、私だ」
「ああっ、助かった!これっこのシーツとって!!絡まっちゃっているみたいで取れないの!!」
「なに?」

そう言ってシーツを引っ張るが、なまえがこちらに倒れこんできただけでシーツは取れない。
そんな馬鹿なと彼女の後ろに回って気が付いた。結び目がある。引っ張っても取れないように誰かがシーツを彼女に巻きつけた後に結んだらしい。

「今取ってやるから少し待て」

硬い結び目に指を入れてなんとかほどく。しわしわになったシーツがぱさりと落ちて、今度は顔の半分までマフラーに埋まったなまえが出てきた。

腰にはひざ掛けらしきものが巻かれていて、何やら男ものらしいコートまで何枚も身にまとっている。完全に着太りをしてだるまのようになってしまったなまえに少し呆れながら問うことにする。

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