サガが私を見る。

「分かるか?」
「いやそれがまったく…」

本当ごめんね、と言いながら集中してみるが、やはり小宇宙は感じられない。そもそもどうやって感じれば良いのかさえもよく分からないのだ。目の前で困った顔をしたサガになんだか申し訳ない気分になってくる。

「そうか…、やはり突然実践は難しいか」
「うーん…、なにかコツとか、ない?」
「そうだな…」

これから聖域で生活するにあたって、やはり小宇宙は基礎中の基礎だ、と沙織に言われた。そうして勉強するようにとも言われたのだが、まさか独学で分かるはずもない。(生まれてからこのかた小宇宙などという単語すら知らなかったのだから尚更)しかも、小宇宙を燃やせと言われた日にはもう爆発したくなった。燃やせるものなのか、これ、というのが正直な感想でやはりたどり着く感想は“意味が分からない”になってしまう。

そんなだから、サガが好意で小宇宙や聖闘士について座学を教えてくれているのに、中々はかどらない。

「サガは?いつから小宇宙が分かるように?」
「そうだな、修行の中で身につけて行く場合がほとんどだろう。時折初めから感覚として理解しているものもいるが…、だいたいは子供のころだろう」

「そっか」と呟いた私を見たサガが苦笑した。「突然分かるものでもない。ゆっくり学んでいけばいい」、そう優しい言葉をかけてくれたサガに頷いて「私もっと頑張るよ!」と告げれば、彼も笑ってくれた。

「では、簡単に小宇宙について説明をしようか」
「うん!」
「小宇宙とは?」
「えーと、身体の中にある宇宙?」
「まあ、そんなところだ」

小宇宙というのは個人差がある、と言ったサガが説明をし始める。

個人差があり、本来は個人の才能であるが、まれにそれが遺伝する場合もある。例えば神話の中で、英雄の子供は英雄、と言ったように。さらにまれに親を超える小宇宙を持った子供が生まれることがある。例えばアキレウスがそれに当たり、逆に親の小宇宙や能力を遺伝した英雄の代表にヘラクレスがいる。

だが黄金聖闘士のように突然変異のような形で一般人の子供が強大な小宇宙をその身に宿す場合もある。つまり簡単にいってしまえば、小宇宙は必ずしも必然ではない、ということらしい。

「個人差のあるある種の天性、とも言えるだろう。なまえの場合はそれにあたる」
「そうなの?」

私の小宇宙、と口の中で反復してなんとなく両手を見てみる。私の天性、小宇宙…。……うん、やっぱりよく分からない。手を握ったり開いたりしているとサガが再び口を開いた。

「君は勝利の女神の小宇宙を受け継いでいるはず、…いや」
「サガ?」
「……断言は、できないが…私は、そう考える。…今のところは」
「…そう?」

妙に歯切れが悪いなと思っているとサガが時計を見た。つられて私も時計を見る。12時半。

「そろそろ昼食にしようか」
「うん、そうだね。付き合ってくれてありがとう、サガ」
「いいや、気にするな」
「お昼何にしようかな」
「良いトマトがたくさん手に入ったのだが…」
「トマト…、パスタとか?」
「それは良い」
「よーし、じゃあお昼作ろう!」
「ああ」


黒煙がまう午後。


おまけ


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