「うう、ひっく、うぃー、それでさ、サガが急に子供ができたとか言って私のところに子供連れてくるの、サガにそっくりですごく可愛い子なんだよ、金髪に、青い目で人形みたい。すごく可愛いの、ふわふわしていて、ほっぺなんか林檎みたいに赤いの、肌は白いのにだよ?」
「人形のようですね」
「本当に人形みたいだったよ、サガの子供だからかな、サガにそっくりで、きっと彼が子供の頃はこんなだったのかなって思ったら、もう可愛すぎてどうすれば良いか分からなくて、ひっく」

なまえがグラスをまた一気に傾ける。

「それで、三人で手をつないで散歩したり料理したり、…そうそう、だけどまだあの子の名前決めていなくて、でもあれ?おかしいな、私子供産んだ覚えがないよ」
「なまえ、飲みすぎです」

先ほどからぺらぺらとわけのわからない話をし始めた彼女の手の中のグラスを取った。恐らく昨晩かいつかに見た夢の話だろうが、今の彼女はそれが現実だったと考えるほどには相当酔っている。なまえが酒瓶に伸ばした手を取って膝の上で組ませた。

今日はもう飲むべきではない。


サガとなまえに子供なんていない。生んだ覚えがないのは当然だ。だがそれに気づくことがないほど彼女は酔っているらしかった。

普段彼女が酒に手をつけない理由がよく分かった。今日もカノンが強く勧めなければ恐らく飲まなかったのだろう。
机にぐでりと倒れこんだ彼女が真っ赤な顔に笑顔を浮かべ話を続ける。

「でもいいんだー、サガの子供なら良い」
「なまえは子供が好きなのですか?」

女官たちに片付けを命じながら訊ねれば、彼女はようやく琥珀色の瞳をこちらに向けた。そしてまたへにゃりと笑う。

「サガが好きだよ」
「…そうですか」

まったくこの恋人たちは私の手には余る。二人が想いを通じ合わせてからもうどれほど経つのだろうか。倦怠期などサガがアナザーディメンションでもかけてしまったのではないかと思うほど仲が良い。それから熱い。普段なまえは恥ずかしがって惚気などしないが、酔っているときは別らしい。

こちらが恥ずかしくなるような直球の告白が飛び出すのだから、もう私には何もできない。熱すぎる。もう付き合って長いのだから、そろそろ落ち着きも得るべきではないのだろうか。


けれどなまえを探していたのか、部屋に入ってきたサガが真っ赤な顔でソファに転がるなまえを見つける。

瞬間頬と雰囲気が緩んだ彼を見て、まあ彼らが幸せなのならばそれで良いかと考えた。

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