「サガ、髪の毛跳ねているよ」
「なに」

手で押さえてやったのだが、手を離した瞬間、またぴこりと跳ねたそれに笑う。

「ふふ、触覚?」
「触覚…、何とも言えないな」
「じゃあ、兎の耳!」
「…そんなものは私には似合わん」
「えー、きっと似合うよ!可愛い可愛い」

けらけらと笑い、潮風を感じながら夕日を振り返った。水平線の向こうに沈もうとしている太陽に海水が輝きを増す。

「綺麗」
「ああ」

サガが後ろから私の手を握った。

「なまえ」
「うんー?」

ぼんやりと夕日を眺めながら答えた私に、サガが背後から呟いた。

「愛している」
「うん、私も」
「聞いてほしい話がある」
「うん、なんでも聞くよ」

振り返らずにそう呟いた。
風が吹いて、背後の木々を揺らした。波音が響く。

「…私は…、私は黄金聖闘士で、君は勝利の女神だ」
「………」
「私は多くの罪を犯した。それらを償いきったわけではない。償いきれるかも、そしてこれから先に何があるかも分からない。今回は天界を退けさせることができたが、次このようなことが起きた時、どうなるか分からない。もしかしたら私は先に死ぬかもしれない、君を置いていくことになるかもしれない」

さすがに背中を向けていられる話題でなくなったため、慌てて振り返る。

金髪が、赤く照らされる。サガも、夕焼けに照らされて輝いていた。ただ、綺麗だと思った。そんな彼の青い目を見上げる。

「ちょっと待って、なんの話?サガが私を置いていったら私、嫌がられても、どこまでだって追いかけちゃうよ!?」
「それは面白いことになりそうだな。だが、ともかくなまえのことは何があっても私が守る。最後まで守る。何があっても愛し抜く覚悟はある」

だから、と言って言葉を切ったサガが私の頬に手を添えた。


「…結婚、してくれないか」

一瞬意味が理解できなかった。

しかしすぐに、思っていたよりもすんなりと頭の中に入ってきたその言葉に、自分の頬が爆発するのではないかと思う速度で熱くなったのを感じた。きっと今、周りから見たら唐辛子のように真っ赤な色をしているに違いない。

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