どうやらシオン様とムウが大暴れをしたらしい。
聖域に戻った瞬間目に入った崩れ落ちた建造物の数々に眩暈がした。

さて、再建の費用はどれほどだろうか。
考えるのも恐ろしいその考えに首を振った。とりあえずは怪我人の救護が先決だった。

倒れたアテナもすぐに目をさまし、全身傷だらけで包帯塗れになったなまえにさらに卒倒しかけていた。

なまえが傷だらけだった理由は、どうやら私が駆け付けるまで、雑兵たちを相手にまた大暴れをしていたらしい。その際に殴りつけられたり切り付けられたりされたらしい彼女は、サガが来てくれて良かったとけろりと笑った。彼女がその後小一時間アテナに説教を食らったことはここに語るまでもない。


天界との戦いが終わり、一週間。
なんとも気が抜けるほどに平和なものだった。

荒れていた地上はあっという間に回復した。神々が何らかの手を打ったらしいが、詳しいことは伝えられていない。
アテナはそれを微笑んで聞いていた。

何はともあれ、天界との戦いは終わった、らしい。
あまりにもあっという間の出来事でいまいち実感がわかない。もしかしたら夢だったのかもしれない、そう思ったが向こう側から包帯塗れで走ってきたなまえにどうやらそんなことはないらしいと知る。


「サガー!」
「なまえ、髪に木の葉が、」
「え?と、とれた?」

バタバタと頭を払った彼女に苦笑して手を伸ばす。まったく関係ない場所を叩いたところで木の葉は落ちやしない。取り除いてやれば、なまえが笑みを浮かべて礼を言った。

「………」
「…?なに?」
「…包帯男の仮装のようだと思った」
「ああ、私もさっき鏡見て思った」

小宇宙を使えばあっという間に治せる傷だが、あまりそういったものに頼りすぎるのも良くない。自然治癒力を落とさないためにも自力で治すことにしたらしい。

「一週間安静って言われた」

唇をとがらせてそう言ったなまえがため息をつく。

「退屈だよ、一週間も!」
「何か楽しみを見つければいい。たまにはのんびりと考えに耽るのも良いことだ」
「うーん…」

私の言葉に頭を抱えて、何を考えるか考え始めたなまえに苦笑する。こういったものは考えて行うものではない。だが確かに、元気の有り余る彼女にはあまり向かないかもしれない。

「そうだな、では…」

ふと思い浮かんだ提案をなまえにする。


「傷がすべて治ったら、二人でどこかに出かけようか。遠くまで、弁当でも持って」
「…!うん!行く!行きたい!すぐ治すから!!」

瞬間目を輝かせた彼女が握り拳を作って何度もうなずく。

「治してくる!!」

一週間は安静にしろと言われたのを忘れたのかという私の声などもはや聞こえないらしいなまえがばたばたと駆けて行った。

だがそんなにも喜んでくれるのならと何も言わない私も私なのかもしれない。



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