そうして彼は自分の兄の存在を思い出す。
ポセイドン、ハーデス。
ああ、そうか。
自分は黄金聖闘士の存在こそが、神々を脅かす排除すべき存在だと信じ込んでいた。
だが、違うのだ。間違えていたのだ。真なる脅威は、奇跡を起こす、この天馬座であったのだ!!!
彼が、それに気が付いたのはあまりにも遅かった。
パアンと風船が破裂するような音が響いて、ゼウスがその場から弾き飛ばされた。星矢自身も衝撃でわずかに後ずさるが、すぐに体制を立て直し倒れこんだアテナのもとへ走り寄る。
「沙織さあああん!!!」
星矢君の声がどこか遠くに聞こえた。
だがまだ終わっていない。あの程度で天帝ゼウスが倒れると思うほうが間違いだったのだ。
まるで何事もなかったように立ち上がったゼウスが私たちを見る前に沙織のもとへ走り寄る。
「サガ!」、名前を呼べば私の心意に気付いたらしいサガも同じように沙織のもとへ、いや、彼女の手の中にある黄金の杖へ駆けた。それを沙織の手から拾い上げて気付く。アテナの小宇宙が込められているということに。
こうなることを彼女も想定していたのかもしれない。私たちが来ることを彼女は信じていてくれた。そして、賭けてくれたのだ。私たちの、力に!
一層輝きを増した黄金の杖をサガも握る。
これにはかつて、ニケのすべての小宇宙が込められていた。
それらは全て私の中にある。
それを全て黄金の杖に込める。
そしてサガの、黄金聖闘士の小宇宙もともに。
仮にも神の小宇宙と、正真正銘の神、それもオリンポスの一柱であるアテナの小宇宙、そして人知を超えた力を宿す黄金の小宇宙が合わさればそれは天地創造に勝るとも劣らぬ強大な力を宿すはずだ。
サガが杖を振りかぶる。
最後の瞬間までニケから受け継いだ巨大な小宇宙を全て爆発させるように杖に込める。
気が付いたゼウスが目の色を変え、それはさせぬと雷の束を振りかざした。
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