「、お前…!」
「う、あ…!!!」
じゅうと肉の焼ける音と嫌な臭い、そして訪れた肉を削ぐような激痛にきつく目を閉じたくなった。だが、必死にこらえて目の前で目を見開いて振り返ったゼウスを見上げた。
目を離したら、彼はきっとサガを殺す。
だから、自分は絶対に目を離すことはできない。
そうして、私が手を犠牲にしたことにゼウスが驚くことによって生まれた隙に、彼の腰から剣を引き抜いて突き立てる。
だが容易にゼウスの手によって払われ、剣は少し離れたところに弾き飛ばされた。それとほぼ同時にゼウスによって自分も弾き飛ばされたということに気が付いたのは、壁に背中からたたきつけられた直後だった。
「…うっぁ!!」
「なまえ…!!」
サガの声が私を呼ぶのと同時に地面に落ちる。
肺が一瞬つまり、咽る。
私の目の前に歩み寄ってきたゼウスが私の首に手をかける。
「愚かな、人の子。下手をしたら手が飛び散る可能性もあったというのに。…それほどまでにアテナと人間らを救いたいか」
「救うなんて、たいそうなことは考えていない!私は、ただ大好きな人たちに無事でいてほしいだけなのだから!!」
睨み上げて続ける。
その時微かに感じた少年の小宇宙に、口角が上がるのを抑えられなかった。
「アテナは返してもらう」
できるものかと言ったゼウスの言葉に首を振る。
「貴方たち神は、生まれた時から高い位置にいる。だから死に物狂いで努力をするということを知らない。沙織とは違う、アテナとは違う!!彼女は人と同じ土俵で、人と同じように努力をして戦う!絶対に貴方達に彼女を倒すことなんてできやしない!!」
小宇宙を一瞬で高め、首を掴んでいたゼウスの腕を殴りつけて離れる。
すぐに私にゼウスが雷を向けたが、サガが叫ぶ。
「行け!!」
それを聞いて私も口を開いた。先ほど、神殿に入るところで私の腕を掴んだ少年の名前、
「…星矢君!!」
「な、」
サガの言葉の直後に私の叫び声が続いた。それは、ここに存在しないはずの人間の名前だった。
だからゼウスは理解できない。
少年の名前が呼ばれたことも。
少年の小宇宙を感じることも。
だから信じることができない。
少年が自分の背後で腕を振りかぶって自分を倒すために全てを集中させていることを!
神殿にたどり着く直前、私の腕を引いたのは彼だった。
どこから入り込んだのか。どこからやってきたのか。そんなことは知らない。しかしサガが驚いていたところを見ると、沙織の命令ではないようだった。
それでも、彼は来た。
沙織の、アテナの為に、天界まで来た。
沙織がいつも心のどこかで考え続けていた少年。
沙織が話してくれた今までの戦いの中で、いつも最後まで、ただアテナの為に戦った少年、天馬座。
天馬座の、星矢。
青銅のレベルを遥かに上回るスピードは光速に差し掛かり、それにより場の空気が変わる。理解できないまでも自身に迫った危機を察知したゼウスが雷をその手に振り返る。だが、もう
遅い。
「――…ペガサス彗星拳!!!!」
「なっ…!!」
突き出された光速の拳が自分に迫るのをゼウスは見ていた。
だが避けられない。
それほどまでにその拳は速く、そして彼のすべてが込められていた。
この少年はまだほんの十数年しか生きていない子供のはずだ。この子供は神とは天と地ほどの差もある、いわゆる弱者である人間のはずだ。
だから、あり得ない、あり得ないあり得ないあり得ない!人間が神を倒すことなどあるはずがない!神を倒すのはいつだって神以外にない!だが、どうだ、この少年は今、
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