双児宮のソファにごろりと転がる。
コーヒーを煎れて戻ってきたサガが起き上がった私の隣に座った。サガが差し出してくれたカップを、お礼を言って受け取る。


「そういえば、カノンは?」
「海界に戻っている。夕方にはこちらに帰ってくるだろうが…」
「そっか」

コーヒーを飲みながら答えたサガの肩に頭を預けた。

春の暖かな日差しがソファにまで届いてなんだかうとうととしてくる。

だがせっかくサガといるのに眠ってしまうのはなんだか申し訳ないと思い必死に眠気を堪える。それに気が付いたらしいサガが苦笑を浮かべた。


「眠いのならば寝ても構わないが…」
「ううん、起きている」

欠伸をなんとか堪えた時に、ふとサガが私の髪を梳いた。
そのまま髪に指を絡ませたり頭を撫でてくれたりと髪を梳き続けてくれるサガに目を伏せる。気持ち良くて余計に眠たくなってきた。


「ねえ、サガ…」

目を伏せたまま彼を呼ぶ。

「私、ずーっと不思議だったんだけどさ」
「ああ」

ぽかぽかと穏やかで静かな部屋の中、心地よいサガの低い声を聞きながら目を開いた。
窓から差し込む光に白いカーテンが柔らかく輝く。

それをしばらく眺めてぽつりと呟く。


「なんでキスって重要なんだろうね」


その瞬間サガがコーヒーを吹きだした。

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