薄ぼやけた春の青空を眺めて背伸びをした。
いい天気だ。最近はだいぶ暖かくなってきて過ごしやすい日々が続いている。

何の気なしにふらりと訪れた双児宮で本を読んでいたサガは私を歓迎してくれた。カノンは出かけているらしい。


しばらく静かな双児宮でぼんやりと過ごしていたのだが、ふいに本を閉じてこちらを見たサガがほほ笑んだ。


「退屈ならばどこかへ出かけるか」
「…うん!出かける!」

ばっと立ち上がった私を見たサガが「落ち着け」と言って笑う。それに笑いながら部屋の中をぶらぶらと歩いた。

「何処に行くの?」
「何処か行きたいところはないのか」
「うーん…」


国立公園でのんびり過ごすのも良いし、アテネをぶらぶらとするのも良いかもしれない。


何処に行こうか、ぼんやりと考えながらサガは何処か行きたい場所はないのかと聞いてみる。正直なところ、私はサガと一緒ならば何処へ行くのだって構わなかった。

サガは尋ねられたことに少し目を丸くして驚いたようだったが、やがて目を細めて口を開いた。

「…久しぶりに、海でも行くか?」

そう言って細められた穏やかな彼の瞳に海の色を見た気がした。

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