そして、ようやくたどり着いた神殿の入り口で待っていた眠りの神が目を細めた。

こちらが無理な頼みをしたのだ。まずは協力に対する礼をしなければならないと口を開いたが、彼は私の言葉を遮るようにしていった。

「タナトスがお前を通したか」
「…私はただ彼の神の横を通り過ぎたに過ぎない」


その言葉に彼は目を伏せると頷いた。


「タナトスが通したのか。…まあいい、元よりハーデス様のご命令だ。些か面倒だが手を貸そう」
「恩に着る」
「お前に礼を言われるために力を貸すのではない」
「だが言わせてもらいたい」

その言葉にヒュプノスは伏せていた眼を開いてこちらを見た。

しばらくそうして私を見ていた彼がこちらに手を翳す。瞬間、巨大な小宇宙に包まれ意識が飛びそうになる。確かに眠り込む人間の精神に接触するのならば同じように意識を飛ばす方法を取ることもあるのだろう。

それは分かるのだが、随分と強引ではないかとヒュプノスを見た私と目があった彼が笑う。


「気をつけろ、夢の世界には精神で入り込むことになるが、精神と肉体はつながっている。精神の死はすなわち肉体の死だ。くれぐれも夢に殺されるな」


夢に殺される。
幸先の悪い言葉だと笑った私に彼も笑った。

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