「っ!?」

爆発するようにはじけて消えた小宇宙にサガがカップを落とした。俺もその方向に顔をあげる。場所は、教皇宮と双魚宮の間くらいだろうか。

「なんだ?」
「…なまえの小宇宙だ」

落としたカップに見向きもせずにそう呟いたサガを見る。そのまますぐに駆けだそうとしたサガの腕を慌ててつかんだ。

「行くな、アテナに宮に戻れと言われたんだろう!召集があるまで…」
「なまえに何かあったのは間違いない、放っておけと言うのか!」
「そういうことじゃない!」
「離せ、カノン!」

俺の手を振りほどいて宮を飛び出した兄の背中を眺めて頭をかく。


「…どうなっているんだ?」

サガの焦りようだけではない。

何故突然なまえの小宇宙がはじけるようにして消えたのか。

小宇宙を探ってみても、その周りには不穏分子の小宇宙など感じられない。先ほどまでアテナ神殿にあった不審な小宇宙も今は感じられない。

ということは小宇宙の爆発は他者の干渉ではなく、あの女自身の意思によるものということになるが、そうするとさらにわけがわからないのだ。
なんでもない場所で突然小宇宙を爆発的に燃焼させる必要などない。

心境の変化、情緒不安定。
それらの原因の仮説を完全に否定できるならばの話になるが。

なんにせよ、あまり良い事態とはいえないようだった。

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