「なまえの頭が爆発するのは困りますが、…それならば修行より病院に行った方が良いのではないですか」
「あ、そんな真面目に心配してくれちゃう?」
「良い精神病院を知っていますよ」
「あ、しかもそっち系?」

冗談だと言って笑った沙織がすぐに私を見て手を膝の上で組んだ。

「しかしなぜそのようなことを突然しようと思い立ったのですか」
「えっ」
「何か貴女にも考えがあるのでしょう?」


誤魔化さずに言いなさいと言った沙織は鋭い。

「なまえ、私たちは友人でしょう」
「うん」
「何か、つらいことがあったら、何でも頼っていいのですよ」
「………」

これではどちらが年上か分からない。
ソファに背中を預けて天井を見上げながら口を開く。

「修行のことは…前から考えていたんだよ?体力つけなきゃ、とか。あんまりみんなの迷惑にならないように、できる限りのことは自分一人でできるようにならなきゃって」
「…そうですか」
「でも、その…、本当はそれだけじゃなくて、」

言いよどんだ私に沙織が微笑む。

「それだけではなく?」
「…沙織、楽しんでる?」
「まあ、そんなことはありませんよ、なまえ」

くすくすと笑った彼女に、相談ならなんでも乗るからさっさと言ってしまいなさいと言われ、覚悟を決める。

「でも…その、聖域から離れたいって言うのは、そのですね、いい年して恥ずかしいんですが、…ううっ」
「恋煩いですか」
「そうそう、こいわずふおおおおおっ!なななんでそれをっ」
「アテナを馬鹿にしてはいけませんよ、なまえ」

くすくすと笑った彼女が机の上で腕を組みなおしてにっこりと笑みを顔に浮かべた。

「そうですね…、貴女の恋する相手を当ててみましょうか」
「いいよ!そんなことしても何も楽しくないでしょ!」
「いえいえ…、私が楽しいです」
「沙織しか楽しくないよ、これ!!」

叫んだ私に沙織はまったく動じることなく言葉をつづけた。

「双子座、サガですね」
「ぎゃああああっ!今その名前を聞いちゃいけない期間!!頭がぱあああんってなる!!」

頭を抑え込んでソファに倒れこんだ私を沙織がおかしそうに笑いながら見る。

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