そんなお爺様の残してくれたもの。財産、意思、それはきっと聖域を救い私の大きな助けになってくれるのだろう。
「…ええ…、もし、それが許されるのなら、お爺様がそれを許してくれるのなら、私は…」
辰巳の淹れてくれた紅茶に口を付ける。
「美味しいです、辰巳」
「恐れ入ります」
「ふふ、考えてみれば、貴方もずっと私のために生きてくれた。感謝を示し、暇をやりましょう」
「お嬢様!?」
「冗談ですよ!これからもよろしくお願いします」
からかえば、見事に騙された辰巳にくすくすと笑いながら立ち上がる。
「…辰巳、なまえを呼んできてください」
「は、なまえを?」
「ええ、…彼女と一緒に、下に降ります」
黄金聖闘士やシオンが何というか分からないが、私は聖域のトップに立つ人間としてみなければいけないのだ。
この場所の現状を。
そのうえで、何か対策を練らなければいけない。誰かに偏ったものではなく、すべてに平等な何かを。
それが聖域の頂点にアテナとして私がしなければならないことだ。
部屋を退室した辰巳の出て行った扉を眺め、すぐに窓から外に視線をそらした。
(お爺様)
どうか、もう少し私にお力を貸して頂けないでしょうか。
私は人が好きです。
貴方に愛され、貴方を尊敬しました。
人は、自分以外のためにもすべてを投げうることができるということを知りました。
それは尊く、誰にも馬鹿にすることのできない行為です。
私は、人が好きです。この地上を愛しています。
どうか、もう少し私にお力を貸してください。
もし貴方が許してくれるのなら、私は。
そっと窓を開けて聖域の澄んだ空気を胸にいっぱいに吸い込んだ。
(私はアテナとしてできる限りのことをやらなければならない)
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