「この後はどうするつもりだ?」

そう言ったアルデバランに私は教皇宮に戻ると伝える。アイオリアも「教皇宮に用がある」と言って泥を掃った。
村娘さんが歩み寄ってきて、お湯を沸かしたから浴びて行ってくれと笑いかけてくれる。この間の失敗もあるから今回はその申し出を喜んで受けることにした。

「すみません、お世話になります」
「いえいえ、お手伝いをしてもらっているんですから、これくらい当然です。それからなまえ、綺麗な花がたくさん咲いたから後であげるわ」
「ありがと!!」

ふわりと微笑んだ可愛らしい彼女に微笑みを返せば、彼女は先に村で待っていると言って踵を返した。アイオリアが目を丸くしてこちらを見た。

「…まさかとは、思っていたのだが」
「うん?」
「なまえ、お前村の人々に身分を明かしていないな?」

一瞬その言葉が何を指すのかわからずに首をひねったが、すぐに理解して頷いた。

「だってわざわざ“私が女神です”なんて言う必要ないじゃない」
「やはりな。ロドリオ村の村人は信心深い。神を人の名前で呼ぶことはないだろうが、彼女はお前の名前を呼んだからそう思ったんだ」

そう言ったアイオリアにアルデバランが笑った。

「なまえがニケであると言っても最初彼女たちは信じないだろう」
「なにー?どういうことだ、アルデバラーン!」

大きな彼に飛び掛かればアルデバランは笑って受け止めてくれた。

「そう悪いことではないだろう。なまえはなまえらしいのが一番だからな」
「そう?ありがとう!」

彼の腕にぶら下がって笑った私を見てアイオリアも笑った。


「そういえば、アテネで今のお前たちのような写真を見たぞ。なんという名前だったか…捕えられた宇宙人?」
「ちょっと待って、それどういうこと」

けらけらと三人で笑いながら下らない話をしているところへ、今度は村のおじいさんが早くしないと降り出すぞと呼びに来てくれた。
空を見上げる。なるほど先ほどまで真っ青だった空は四分の一が黒い雲に覆われていた。

天気は一気に変わるらしい。これは本当に降るかもしれないとアイオリアとアルデバランと慌てて片づけを済ませて村に向かった。

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