「うー、さぶっ」
ヒュウと吹いた冷たい風にぶるりと震えた。着込んでいるのだが、それでもまだ寒い。肩掛けをしっかりとかけ直して教皇宮を進んだ。
列柱の向こうではいまだ降りやまない雪が一面を真っ白に染め上げていた。時折強く吹き荒れるそれから逃れるように薄暗い宮の奥へと足を踏み入れる。
書庫に行って何か本でも読んでみようと思って立ち寄ったその場所は薄暗く埃っぽかった。
今度天気が良い日に窓を開けて掃除をしたほうが良いかもしれない、なんて思いながらランプに明りをともして部屋を照らした。
「…あれ、…」
柔らかく輝く色の髪を机の向こうに見つけて歩み寄る。
「サガ…?」
古書を広げたまま眠り込んでいたのはサガだった。恐らく何かの作業中だったのだろうが、その内容をはかり知ることはできなかった。
「サガ、寝るなら宮に戻りなよ。風邪ひいちゃう」
「…う…」
ゆっさゆっさと揺らしてみるが、相当深く眠り込んでいるようでサガはまったく起きる気配がない。
ここまでぐっすり眠っているのなら起こすのも可哀想だろうと肩掛けをかけてやる。
「おやすみ」
(良い夢を)
ランプの明かりを消して、窓辺に歩み寄った。
外ではまだ、雪が降り続けている。
シオンの話では当分降り続けるらしい。
眠るサガの背中を振り返る。
目が覚めたら、何か温かい飲み物でも淹れてあげようか。そう考えて書庫を出た。
本はまた今度、そう、たとえばサガが目を覚めた後にお勧めを聞こうかなんて考えながら。
(しばらくしてお茶を手に戻った書庫でサガはもう目を覚ましていて、肩掛けを手に目を丸くしてこちらを見ていた)
5/5