おまけ



「何故ニケをあのようにからかうのだ、ミロ」

コーヒーを手渡してきたカミュが呆れたような顔で俺の正面に座る。
別にからかっているつもりはないと言えば、彼が眉を顰めてこちらを見た。

「彼女は怒っていただろう」
「カミュ、お前は嬉しくないのか?」
「…何がだ」


サガのことだ。

よく笑みを浮かべ、自分の意見をはっきりと述べ、昔のように候補生の世話を焼く。13年前と同じ光景。そのすぐそばにいるのはニケ女神だ。

「俺はサガのことが嫌いではない。むしろ尊敬していたと言っても良いだろう」

サガのしてきたことを考えても、それでもサガは尊敬に値する男だと断言できる。
サガは誰より地上のことを考えていた。そして今は女神のために、そして地上の為に尽力する仲間だ。

「だが、サガはいつも自分を等閑にしてきた。お前はそう思わないか」
「…本人が、それを望んだ」
「だが、それがサガのためになるのか」

その言葉にカミュは答えなかった。俺も彼に答えを求めるつもりはもともとなく気にせずに続ける。

「だから、俺は嬉しい」
「………」
「サガがなまえといるときに見せる顔は、素のサガだ。取り繕ったものではない」


俺は嬉しい。
尊敬していたサガが、13年間のことを悔い続け女神の為に自分を殺し続けることはあまり歓迎できない。けれどなまえ、ニケならその運命からサガを引きずり出せるのではないかと俺は思う。

女神でありながらその枠にとらわれないような彼女なら、きっと。

「俺は祝福するつもりだ」
「…何にせよ程々にしておくべきだ」

カミュはそれきりそのことに関してそれ以上何も言うことはなかった。

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