サガが不思議そうに私を呼んだが、靴ひもがほどけているから靴を見ているのとか適当なことを言って地面を見つめる。
「…靴紐のないタイプの靴のようだが」
「…えっと…、心の綺麗な人には見えない幻の黄金色の靴紐が…」
「なまえ?顔が赤いが…、熱があるのではないか」
そう言った彼の大きくて暖かな手が額に触れた。
たったそれだけ。
たったそれだけのことなのに、それまで考えていたことのせいでさらに顔に熱が集まった。
それを見て、サガが慌てたような声を出す。
「大丈夫か、なまえ。具合が悪いのなら教皇宮まで送っていくが」
「ちがっ、違うの!そうじゃないの!平気だから、元気元気!超マッスル!」
「とても大丈夫には見えない」
すぐに送っていこうと彼に手を引かれる。
触れたところが、じんわりと火傷するみたいに、熱い、
「なまえ…?」
サガから手を離す。まだ、サガの目が見られないまま。
「あの、あのね、サガ」
「どうかしたか?」
優しく声をかけられて、それでも何も言いたいことが見つからなくて視線がぐるぐると宙をさまよう。
「ぷっプリンが食べたい!!」
意味分からない。いや、本当に。
何故いまプリンが出て来たんだと、自分で自分を殴りたい。
それはもう拳が頬にめり込むぐらいぶん殴りたい。
「ああ、あとで作ろうか」
それでもサガはふっと柔らかな笑みを浮かべて言った。
ああ、本格的に熱が出てきたかもしれない。
(君への熱)
(はやくこの熱をおさめなきゃ)
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