城戸邸の玄関口でスニーカーのひもを結んでいた時にふいに陰った。

顔を上げれば不思議そうに私を見下ろすアイオロスが立っていて、意外なその人物に目が丸くなるのを感じた。


「アイオロス、どうかしたの?」
「小宇宙を感じたので参りました。ニケは何を?」


私はあまりアイオロスと接点がない。
そんな彼がどうして私の小宇宙を感じたからという理由でやってきたのだろうとぼんやりと考えながらひもを結び終えた。立ち上がっても、身長差がかなりあるアイオロスを見上げて答える。

「午後から沙織が私に会わせたい人たちが来るみたいだから、午前中のうちに聖域へのお土産選びに行っておこうかなと思って」

アイオロスが一人で行くのかと尋ねて来たから私は素直に頷けば彼の表情が険しくなった。「私もともに、」そう言った彼の言葉を慌てて遮る。

「そんな大したものじゃないから、それに近所だし、一人で大丈夫だよ」
「しかし何があるか分からない。ニケ、貴女はもっとご自分の立場をご理解されるべきだ」
「でも、…」
「ニケ」

(あれ、なんか違和感?)

どこかほかの皆と、とくにサガやデッちゃんと、アイオロスの私に対する扱いについての違和感に首をひねった。なんだろう、アイオロスと彼らの違い、それは私に対するものだろうか、それとも?
そう考えた瞬間、後ろでかつりとした靴の音に振り返る。サガが書類に目を落としたままこちらに歩いてきていたらしい。

「アイオロス、…それとなまえ?なにをしている、こんな場所で?」

書類から顔を上げたサガが私とアイオロスという組み合わせが意外だったのかわずかに目を丸くして聞いてくる。出かけたいのだと言えばサガは全て理解したのか頷いた。

「なるほど。だがアイオロス、アテナがお前をお呼びだ」
「アテナが?…分かった、すぐに行こう。だが…」

こちらを見たアイオロスと目があった。
絶対一人で行かせる気はないらしいことを雰囲気から感じ取って困ったときサガが苦笑を浮かべて私たちの間に入った。

「私がなまえと行こう」
「一人で大丈夫なのに…」
「どこの誰が勝利の女神を狙っているか分からないから我慢してくれ、なまえ」

黙り込んだ私にサガも黙り込む。
かと思えば、護衛が必要な理由を一から百まで上げていこうかと言われ吹き出す。そんなにたくさんの理由はないだろう!

「うん…、分かったよ、サガ」
「すまないな」
「謝らないで。こちらこそお世話になります」


苦笑いで頭を撫でてきたサガに頷いた。

まずはお店を見て回ってお土産を決めよう。やっぱり食べ物のほうが良いだろうか。日本らしくお煎餅とか?ああそうだ、午後から会いに来るという人たちに出すお茶菓子も買ってきたほうが良いかな?(でも何人来るのか知らないのだったということを思い出し、本日用のお茶菓子購入は諦めた)

「行こう、なまえ」
「うん、サガ」

歩き始めたサガのあとを追いかける。先ほどの違和感はすっと消えて首をひねった。あの違和感の正体はなんだったのだろう、か?

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