すっかり土埃まみれになった白羊宮の前を箒で掃いていく。それでも広いその場所はなかなか綺麗にならず、苦戦しているところにムウも箒を持ってやってきた。
「手伝っていただいてすみません、なまえ」
「ううん、楽しいから良いよ!」
先ほどまでムウが崩れそうになった柱を修復していたため、そのときに削った柱からでた土埃を箒で掃きながら鼻歌を歌う。ムウはこんなことが楽しいのかと不思議そうな顔をしていたが、本当に楽しいのだから仕方がない。掃除は嫌いではないし、むしろその逆だ。
「…それに、さっきのムウも」
「私が何か?」
「柱をすごくうまく削るから見ているだけで楽しかったってこと!」
そう言えばムウは一瞬目を見開いたが、やがていつもの穏やかな笑みを浮かべた。
「いつも聖衣の修復をしているからでしょうか。細かい作業は得意です」
「聖衣の修復もするの?」
「ええ、しますよ」
良ければ今度見に来ると良いと言った彼に頷いて、柱を見上げた。すっかり綺麗になった柱は天に向かってまっすぐに伸びている。
「それにしても、ずいぶんとボロボロだったね」
「ええと、まあ…、デスマスクが直撃しまして」
「…なにそれ、デッちゃん酔っぱらっていたの?」
「さあ…、酔ってはいなかったと思いますが」
苦笑いを浮かべた彼が埃を袋の中に掃きいれて、立ち上がった。
「さあ、お手数をおかけしてすみませんでした。あとは私が片付けますからなまえは白羊宮でお茶でも飲んでいってください」
「片付けも手伝うよ。今日は三時まで何もないから」
「そうですか?では一緒にお願いします」
真っ青な空の下歩き出したムウの後を追う。袋の一つを私も持って、ちらりとすっかり綺麗になった白羊宮を見直した。うん、やっぱり自分で掃除するとスッキリする。やりきった感がすごいと一人感動しているとムウがこちらを見た。
「なまえ、三時からは何かあるのですか?」
「えーとね、サガとロドリオ村に行く約束しているんだ」
「サガと村へ?そうですか、それにしても貴方たちは本当に仲がいいですね」
その言葉に苦笑する。そして私が勝手に付きまとっているだけだと言えばムウは首を傾げて「サガが好きなんですか」なんて聞いてきた。
「は?」
「なまえはサガのことが好きなのですか?」
好き。
私が、
サガを?
すき!すきって好きのこと?恋愛感情の好きのこと!?私がサガに恋愛感情を?
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