泣き声が聞こえる。


絶望と、悲壮と、それから運命を呪う泣き声が、永遠と響く。

それはやがて胸を引き裂くような激しい慟哭にかわっていった。
痛い、苦しい、悲しい、寒い、つらい、もう嫌だ、いや、嫌嫌嫌、
誰も助けてくれない。アテナも彼も私を置いて行った。本当に一人きり、みんな私を見てくれない。もう嫌だ、耐えきれるものか、だって


「貴方がいない」


やがて愚行により翼を切り落とされ、それでも彼女はアテナ女神の守護する町を逃げ出した。
遠く地平線の果て、先日の聖戦の最後の地へたどり着いた彼女はそこで神々に泣きつき、それでももはや自分より遥か高位な神々にも何もできないと悟ったとき、



「――――っ!!!」


飛び起きた瞬間、真っ赤な部屋が目に入った。それが夕焼けだとすぐに気が付いたがその赤がひどく気持ちが悪いものに感じて口元を両手で覆う。
「…うっ、ぇほっ…!」


背中を伝う汗が気持ち悪かった。気分もひどく悪い。寝台から降りて、すぐに視界がぐらりとゆがんで床に倒れこんだ。気持ちが悪い、ふらふら、いや頭がぐらぐらして、汗がひどい、吐きそうだ。口元を押さえて、寝台に手を伸ばす。そこに手をついてなんとか立ち上がって、頭を抱え込んだ。

ちくたくと繰り返される時計の音と、どくんと跳ねるような心臓の音ばかりが頭の中に響く中、真っ赤な夕焼けを見たくなくて寝台に顔を押し付けた。


ただただ、ひどく気分が悪かった。


(今の夢はなに?)

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