「ねえ、サガ」
「…なんだ?」
「理由はさ、聞いたの?」

ふいにそう尋ねられる。意味が分からずになまえを見下ろせば彼女は次期教皇のことだとじっと私を見つめ返しながら言う。その質問の答えとして13年前の夜にと告げるとなまえは首を振って、今回のことだと言う。

「…いや」
「サガはもう許されている。沙織も怒ってなんていないよ。だからもしまた教皇に選ばれなかったのだとしたら、何かそれなりの理由があるんじゃないかなって私は思う」
「そうだろうか。私にはまだ罪がある」
「サガがそう思うのなら」

私の言葉を遮ったなまえが私の手を取ってぎゅうと握った。熱のせいかいつもより暖かなそれをそっと握り返せばなまえがほほ笑んだ。

「私はちゃんと聞いたほうがいいと思うな。もちろんサガが聞きたくないなら無理して聞く必要はないよ、でも一人でなんでなんでって悩むくらいなら理由を聞いたほうが良いと思う。罪があるのならそれを贖う方法だって聞ける。そして理由を聞いて、さらに何故って疑問がでたならそれをまた聞くことだってできるでしょ?でも聞かなきゃ何も始まらない」
「…それは」


13年前スターヒルで聞いた以来考えないようにしてきたことだった。

何故私ではなかったのか、
何故アイオロスだったのか。

答えなど自分では出せなかったし、出したくもなかった。それはきっと面白くない答えだとずっと信じて疑わなかった。だが、本当にそうだったのか?


それは決めたシオン様にしか分からないことではないのか。そう気づいた時なまえが再度口を開いて繰り返した。

「私はシオンに聞いたほうがいいと思う」
「…ああ、そうだな」
「げほっ」
「…なまえは少し休むと良い。押しかけてすまなかった」

そう言って頭を撫でてやればなまえは目を細めて首を振った。

「ううん、私こそごめんね、…少し休みたいかも」
「ああ、ゆっくりおやすみ」
「うん、おやすみ、サガ」

そう言って目を閉じたなまえにシーツをかけ直してやり部屋を出る。ニケの部屋からすぐ傍に教皇の間はある。すぐにたどり着いた大きな扉の前で小さく一度息をつくと、その重い扉に手をかけた。

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