恐らく外だ。

この雨の中?あり得ないと思ったが、確かにそこにサガの小宇宙があるのを感じて、少し迷ったがすぐに地面を蹴った。

そして外に飛び出して、すぐに傘を持ってくれば良かったと後悔する。雨はひどく強いし、季節の冷たい風もあわさって寒いのを通り越して痛いくらいだ。

サガは、こんな雨の中本当に外にいるのだろうかと少し不安になりながらも小宇宙を辿る。そうしてすぐにたどり着いた場所で彼自身の姿を見つけた。柱の陰になっているところに、彼が頭を抱えて立っている。呼びかけてみたが、サガがそれにこたえることはなく代わりに時折嘆くかのような声が漏れるだけだった。

その姿があまりにも痛々しくて足を止める。打ち付けてくる雨が痛い。それはサガだって変わらないはずなのにこの人はこんなところで何をしているのだろうか、


昨晩雑兵とした会話を思い出す。ごまかそうとしていたがなにか…そう、教皇だ。

次期教皇を決めるかもしれないと言っていた。そうでなくとも重要な何かを決めるのだと。それとサガの姿を照らし合わせる。答えは明白な気がした。



「…サガ」

名前を呼べば彼がびくりと体を震わせる。

「サガ」

そうして、ゆっくりと顔を上げたサガの顔を見て予想していたとはいえぎょっとする。

彼はやはり、泣いていた。
見開かれた青い目からぱたぱたと涙がとどまることなく流れ続ける。それに少し焦った私の前に立っていたサガの視線が私を捉えると同時に、彼の膝は崩れ落ちた。

「サ、サガ!?大丈夫、」

慌てて駆け寄った私の手を彼の大きな手が掴んだ。

「また…、駄目だった。やはり私は許されてなどいない、いや、わかってはいたのだ、許されるべきではない。許される資格もないということは、なまえ、私はそれだけの罪を犯したのだ。この罪は贖罪することも許されず永遠と背負っていかなければならないものなのだ。分かっているのだ」

あの方も女神も私を許してなどいないと言った彼の震えた手に力が込められた。掴まれた腕がひどく痛む。
「っ…」
「それだけの罪を私は、だがそれでも私は免罪が欲しいのか、なんと愚かなことだ」
「サガ、落ち着いて。とりあえず宮に戻ろう、こんなところにいたら風邪ひいちゃうよ」
「だが、それでも私は」

完全に私の言葉を聞いている様子がなく、言っていることも前後の繋がらない短文ばかりのサガの頬に手を添えた。

まったくなんて冷たい、


「…サガ」

次期教皇を決めるのかもしれないと言った雑兵の言葉を思い出して小さな声でそっと聞いた。

「次期教皇に選ばれたのは、アイオロスだったの?」

彼と視線を合わせてそう問いかければサガは一瞬息をのんだが、やがて首を横に振った。

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