「ちょ、ちょっとサガ!良いよ!私ちんちくりんだし!?彼氏いない歴=年齢だし!?あは、は…、はぁ…」
「なまえ、そういう問題ではない!聖域と冥界との関係上今の侮辱は許されぬ」

そう言って振り返ったサガに必死で首を振る。沙織に言われているんだ、なるべく問題は起こすなと。たぶん今のこれがその問題の火種に当たる気がする。だからこそ必死で火消しをしようとした私を完全に無視するように銀髪のおにーさんが続けた。

「人間が細かいことを気にしても仕方があるまい。二界のことを最終的に決めるのは神であるからな、貴様は下がってみていろ」
「ちょっと!おにーさんも!なんで火に油を注ぐような言い方をするの!サガは人間でもあれだよ、すごいよ!」
「…………」
「……おい、ヒュプノス、あの女神はこんなだったか」
「…いや、」
「これではただの馬鹿ではないか!」
「ばか…っ!!黙って聞いていれば!おにーさんだって何そのおでこの星マーク!おでこに肉って書いてあるのと同じくらい変だよ!!」
「なんだと、この小娘め!!」
「やめろ、タナトス」
「なまえ、落ち着くんだ」

ぐいとサガに襟を掴まれて引き戻される。
「だって、サガ!」
「落ち着いてくれ」
「あの人サガのことを馬鹿にしたでしょ、ん…」
ふいに真横に金髪のおにーさんが立って顔を上げた。サガは相変わらず顔を顰めたまま私を庇うように前にたとうとしてくれたがそれを制しておにーさんの目の前に立つ。


「おにーさんもまだ何か言うの?」
「………」


じいっと見つめてくる金色の目を見つめ返してそう言った私におにーさんは少しだけ目を細めた後に笑った。

「…なるほど、…いや、そういうことか」


目を伏せた金髪おにーさんはしばらくそのまま何かを考えるように黙っていたが、やがてその金の瞳に私を映すと薄く笑みを浮かべて言った。


「私は眠りの神ヒュプノス。私はお前を歓迎しよう、…なまえ?」


(恐らくサガが私を呼んだことで私の名前を知ったのだろう)
(けれど何故彼が私を名前で呼んだのか、私にはよく分からなかった)

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