「…それは?」
「カミュのところで話していたらね、ミロが寒い寒いって言い出して」

確かに寒いと同意した彼女にカミュが昔弟子たちに使っていたマフラーを取り出してきて彼女にぐるぐると巻いたらしい。
「えへへ、二枚も巻いてくれたー」

嬉しそうに笑いながらマフラーに手を添えたなまえが温かいと言って顔を埋める。

「このコートは?」
「あ、そうそう!それでマフラーを巻いてくれた時にディーテとシュラが通りかかって、面白がって着ていたコートを貸してくれたの。そしたら見た目が真ん丸の雪だるまみたいになっちゃって…、それを面白がったミロがカミュとミロの分のコートまで貸してくれて最終形態コートマンの出来上がり」
「コートウーマンだ」
「あ、そうそう」

嬉しそうに笑いながら言ったなまえが続ける。

「そしたらムウと一緒に通りかかったシオンが貴鬼のひざ掛けまで貸してくれて、こうなったの」
「シーツは?」
「デッちゃんの悪戯!」
「…なるほどよく分かった」

まったくあいつはと呆れながら息をつけば、なまえはさして気にしていないのかけらけらと笑った。そして私からシーツを受け取ると丁寧に畳んで立ち上がる。私もすぐに立ち上がって彼女に微笑みかけた。
「これからアテナのお出迎えか?」
「うん!!今日は出かけているみたいだけどそろそろ帰ってくるころだから」
「そうか、きっとアテナもお喜びになる」

そう言えばなまえは笑ったがすぐに視線を泳がせる。何か言いたいことがあるのかと優しく問えばなまえは窓の外を指差した。

「あの、今日はいい天気でしょ?」
「そうだな、よく晴れている」
「それで散歩とかしたら楽しいと思うんだ、帰りは沙織も一緒に」

そう言ってこちらを見上げた彼女に言いたいことを理解して頭を撫でた。

「そうだな、…私も一緒に行ってもいいだろうか?」
「…!うん、もちろん!!」


ぱっと表情を明るくしたなまえにつられて笑みが浮かんだ。着替えてくるから待っていてくれと言った私になまえは何度も頷いて宮の前に駆けて行った。小さな背中がさらに小さくなっていくのを見送った後に、私も一度着替えの為に部屋に戻る。

「サガと歩くの楽しいから好きー!」

ふと遠くから聞こえたその声になんとも元気な女性だと笑った。

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