ふと教皇宮のほうを見上げたシュラがこちらに顔を向けると首をひねりながら言った。

「…ひどく下らない叫び声が聞こえた気がするのだが」
「ああん?気のせいだろ」
「どうかな、シュラはひどく耳が良いから」

誰の叫び声だったのかな、と笑いながら紅茶の入ったカップに口をつけたアフロディーテがシュラを見た。誰の、声ねえ。

「…ニケ」


そのシュラの言葉に奴を見たアフロディーテがフッと笑みを漏らす。

そうしていくらなんでもそれはないだろうと言ったアフロディーテに、シュラはどうやら反論しようとしたがまさか女神が聖域で悲鳴をあげるような失態はしないだろうとでも考え直したのか口を噤む。

俺はそれに口をはさむかどうか考えたが、恐らくそれをして何も得することはないと考え直して開きかけた口を閉じた。


(あいつなら、やりかねねえ)

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