ふわりと風が吹いて金色が視界に入った。

身体の感覚は何故かふわふわとしたままで、目に入る景色がぼやける。

空にぽっかりと浮かんだ白い月の下の黒い木々が風に揺られて木の葉を舞いあげた。


足は勝手に進む。
視界の端を、また金色の髪がよぎる。
誰の髪だろう、私のものだ

違う、私の髪は黒い。でも、この金髪は私の髪、


そこまで考えて、ああ夢なのだと思った。
それなら髪の毛の色が違かろうと、こんなにふらりふらりとした思考と足取りで聖域を歩きまわっていても不思議ではない。次第に私は私の知らない教皇宮の奥に入っていく。道など知らないはずなのに、足は勝手知ったるように進んでいく。なんとも不思議な気分だ。


そうして暗闇の中を進んでしばらく行くと、ひとつの扉にたどり着く。
扉の前に待機していた兵士さんと目があった、

気がした瞬間、彼らが足元から崩れて床に倒れ込んだ。
私は彼らの横を通り過ぎて部屋に入る。


細い月明かりの差し込む部屋の奥に、ひとつ寝台が置いてありそこに誰か、眠っているのが分かった。
私の足は迷うことなくその人の下に進む。


それは、少年だった。
あどけない表情で深く眠りこむ少年。

見たことがない子だ。
ああ、でも邪武君に近い年かもしれない、と思った時私の手が動いて彼の胸の上に重ねられた。


少年は、未だ起きない。



1/4