あまりにも気まずくてつい声を出してしまう。


「…あの」
「気にしたら負けですよ、なまえさん」
「あ、うん…って、ええーー…」

だが私の声に沙織は簡潔にそう言っただけで振り向きもしなかった。それでも彼女と違い、周囲から突き刺さ去り続ける視線の数々にはだんだんと身が縮こまってくる。
古代のような服に身を包んだ人々がしげしげと私を眺める視線がちくりちくりと刺さる。それはもうそのうち穴が開くんじゃないかと思うレベルで視線が刺さる。

「あ、ごめん」
「いいえ」

だから沙織や邪武君の背中に隠れるように歩いていたら、邪武君の足を踏んでしまった。
大して気にした様子もなく答えた彼に申し訳なく思いながらも繰り返さないように少し距離をとる。相変わらず視線は私に突き刺さったままだ。
兵士の格好をした男性や、不思議なお面をつけた女性に、それからやっぱり古代風の格好をした美人な女性たちが沙織と邪武君に頭を下げるさいに、やっぱり私をちらりと見て首を傾げたり、容赦なくガン見してきたり。


うん、気まずい。


「私変な格好している?」
「大丈夫ですよ」
「ううーん…、じゃあ顔になんかついていたり?」
「しません」
「髪形、」
「問題ないです」

じゃあこの視線はやっぱり私の存在自体が不思議というそういうことか?うん、まあ彼らの言いたいことも分かる。スニーカーだしね!ジーンズだしね!Tシャツだしね!ああ、もう少しきっちりとした格好を着てくれば良かった…。

「うわ、ごめん、邪武君」
「大丈夫です」

自分の格好を眺めていたらまた邪武君の足を踏んでしまった。私の馬鹿!
その間も、視線の矢が留まることなく私にちくりちくりと刺さり続けていた。


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