「おら、飲みに行くぞ、なまえ」 扉を開けたら目の前にはすでに出来上がったデスマスクさんがいました。 「いや、本当意味が分からないのでお引き取り願えますか」 「つれないこと言うなよ、なまえ」 「ひゃっ・・・、いたたたたっ!!デスマスクさんの馬鹿力!力加減を考え・・・って、うぁ、痛いですってばあああ!」 がっしりと私の手首を掴んだまま、良い笑顔でぎりぎりと力をいれてくるデスマスクさん。 ちょ、ミシッて・・・ミシッていったよおおお!え、ちょ・・・それ以上は・・・ら、らめええ!本当におれちゃう!!いや、まじで!! 「止めないか、馬鹿蟹!!」 「今貴方が救いの神に見えました、アフロディーテさん!!」 スリッパでデスマスクさんを思い切りはたいた後、間髪いれずに蹴りをいれて、彼を吹き飛ばしたアフロディーテさんに、手首をさすりながら感激する。・・・くそぅ、赤くなっているぞ。 だがちらりと見えたデスマスクさんも中々に重症だったらしい。 「・・・あの、デスマスクさん、動きませんけど」 「動かないね」 「まさか死んだんじゃ・・・」 「こいつは死んでも復活するから大丈夫だろう。紫龍ほどじゃないけどね」 床に倒れたまま、ぴくりとも動こうとしないデスマスクさんをシュラさんが踏みつけながらこちらを見た。 「飲みか・・・パーティには来ないのか、なまえ」 「パーティという名の飲み会ですよね?今絶対そう言いかけましたよね?・・・私、もう眠るところだったんですけど」 「アテナも君が来るのを楽しみに待っているよ?」 「うーん・・・」 明日も朝は早いのだが、と時計をちらりと見るとアフロディーテさんが、にっこりと笑った。 「ちょっと顔を出すだけで良いから」 「・・・なら」 それが私の間違いだった。 広い教皇の間に、なまえたちの爆笑が響いた。 「ずっと気になっていたんですけど、その鎧はやっぱりゴキブリがモデルなんですか?だって色とかツヤとかそっくりじゃないですか!!」 「よく言ったぜ、なまえ!!」 「そうですか、なまえ、デスマスク。そんなに冥界への片道切符が欲しかったのなら、そうと言ってくだされば良かったのに」 恐らく思い切り力を込めたのだろう、笑顔でなまえの頭を掴んだミーノスに彼女が悲鳴をあげる。それを笑顔で眺めるミーノスを周囲の連中は止める気配もない。それを見たラダマンティスがため息をつきながらやってきて彼女を解放してやる。 「・・・」 教皇の間に訪れた時彼女は、最初こそ冥界勢の存在に驚いていたがすぐに溶け込んだ。そこまでは良かったのだが、その後誰が飲ませたのか知らないが酒を飲んだなまえは見事に酔っ払い顔を真っ赤にさせて、今まで心に留めていたのだろう言葉全て言いたい放題だ。 「な、なにを怒っているんですかー!やっぱり真実なんですかー!!?」 「すみませんね、なまえ。貴女に自殺願望があることを気づかなくて。安心して下さい。しっかり責任をもってコキュートスまで落として差し上げます」 「でも、ゴキブリって結構固いじゃないですか!防御力とかすごいんじゃないですか?」 「大丈夫です、案外死ぬのは一瞬で済むらしいですし、安心して下さって結構ですよ」 「いたたたっ!痛いです、ミーノスさん!あっ、なんか踏んだ!!」 「なまえ、それは酔い潰れた蟹だよ」 「わー、大きい蟹ですねー!鍋とかにしたら美味しそう・・・」 「君、大分酔っているね」 呆れたように笑ったアフロディーテと、真っ赤な顔で笑い続けるなまえに心底溜め息をつきたくなる。 「・・・誰だ、なまえに酒を飲ませたのは」 「・・・、ミロ」 私の呟きに、隣でワインを空けていた無表情にシュラが短く返した。 「なまえは拒否していたが、無理やり飲ませた」 「なるほど、後で絞めあげておこう」 真っ赤な顔で向こう側のソファに倒れ込んだなまえに、アフロディーテがシーツをかけてやっているのを眺めながら、ウゾの瓶を傾けた。それにしても良い酔っ払いぶりだった。彼女が笑い上戸というのは初めて知ったと思いながら、空になった瓶を机の上に置いた。 「アイオロス?」 「なまえを部屋に運ぶよ。どうせ、デスマスクあたりが無理やり連れてきたんだろう?」 「・・・否定はしない」 「それは肯定とも言わないかい、シュラ?」 目を反らしたシュラの頭をがしがしと撫でてやれば、彼は睨みつけてきたが幼いころから彼を知っている私としてはまったく怖くない。むしろ懐かしいものだと笑いながら、立ち上がった瞬間、ふらふらとした足取りのアイアコスが目の前を通り過ぎて行った。 「おーい、ミーノスー!俺、ミャンマーに帰るぜー!!」 「貴方まで酔っ払っているんですか。その千鳥足で帰れるというものなら、どうぞ、ご勝手に」 「お前も一緒に行くぞー!」 「な・・・、やめなさい、ふざけるのも大概にしてください。何故私が貴方とミャンマーに行かねばならないのですか。アイアコス、離しなさい、服が伸びます!!」 なまえのすぐ隣に座っていたミーノスのシャツを、千切る勢いで思い切り引っ張るアイアコス。しばらくぎゃあぎゃあと良い争いをしていたが、とうとうミーノスが我慢できなかったのか、アイアコスの顎にアッパーを喰らわせる。ああ、あれは痛いぞ。 だがそこで事件は起きた。 |