今回花火をくれた星矢君たちも是非誘おうと考えながら、花火を眺めているとアイオロスさんが笑った。 「あのメンバーならきっと大騒ぎになるだろうな」 「ふふ、何もしていなくても大騒ぎですからね」 「あ、落ちた」 「本当」 ぽてりと落ちた光が地面でぱちりと最後の輝きを放って消える。いつの間にか周りは独特の火薬臭でいっぱいだ。でも、夏らしくてどこか嫌いにはなれないのだとその香りを吸い込む。新しい花火を彼に渡して、私も最後の一本を取り、二人で火をつける。また匂いが少し強くなる。同時にぱちりぱちりと言い始めた線香花火を眺めているとアイオロスさんが口を開いた。 「なまえ」 「なんですか、アイオロスさん」 「夏は、まだ長いから、またこれ…、ええと線香花火、をやろう」 「ええ、是非!」 「冬になるまでは、アテネを散歩したり、温かいものを作ったりして過ごそう。それにその時期は夕焼けが一層綺麗に見えるぞ。それから、冬は雪が降るから、雪だるまを作ろう。あと雪合戦」 「手加減してくれますか?」 「デスマスクを盾に使っていいぞ」 「逆に盾にされそうで嫌ですね」 「動けないように縄で縛っておけばいい。ええ、と、日本にもあるだろう。しめ繩だったかな」 「明らかにしめ繩の用途を間違えてます」 でもしめ繩に巻かれたデスマスクさんは中々面白いかもしれない。彼が聞いたら怒るかもしれないけれど。 「それで、暖かくなってきたら日向で一緒にシエスタをしよう。菜の花畑に行くのも良い」 「ああ、あの、えーと、なんとかって神様のデ…、デ、デカメロン?…神殿の傍の菜の花がすごく綺麗だってミロさんに教えてもらいましたよ!」 「なんとかって神様のデカメロン神殿…?…デ…?デルフォイ?」 「あ、たしかそんな感じです」 「デカメロン………。じゃあデルフォイにも一緒に行こう。夏が来たら、そしたらなまえ、また一緒に花火をしよう。来年も再来年も、その次もずっと」 「もちろんですよ、アイオロスさん!」 そう言って笑った私に、アイオロスさんも笑った。少し涼しい風がふわりと吹きぬけて行った。慌てて手で壁を作って線香花火を風からガードする。そうして気がついたことだが、アイオロスさんもほぼ同時に同じ動きをしていて。それに気付いた私たちは目が合うとくすりと笑う。 「以心伝心ですか?」 「以心伝心かもしれない」 「素敵ですね」 「素敵だな」 ふわりと笑ったアイオロスさんに私も自然と笑顔が浮かんだ。それを見たアイオロスさんが、笑顔のままこつりと軽く額をぶつけてきて、それによって手元から線香花火の光が二つ地面に落ちる。 「あ」 「あ」 「落ちた、けど・・・」 「まだ終わってませんね」 地面におちてもぱちりと輝いた二つの線香花火は、いつの間にかくっついてぱちりと光を発し続けていた。 線香花火、ぱちぱち光る |