「おや」

巨蟹宮の前で、いつまでたっても出てこない宮の主を、私は薔薇を抱えて待っていた。あまりにも遅くてそろそろ毒薔薇の栽培でも始めてやろうかと思った時上からなまえとアイオロスが下りてくるのが見えて声をかける。

「出かけるのかい、なまえ、アイオロス」
「海に行くんです。アフロディーテさんは?その薔薇は・・・デスマスクさんへの贈り物ですか?」
「君はそんな気持ちの悪いシーンを見たいと思うのかな」

何故私があの下品な男に薔薇をあげなければならないのか、と言えばなまえはきょとんとして駄目なのかと聞いてくる。私があの男に薔薇を渡すシーンを想像したのかアイオロスが吹きだし、なまえはそれを不思議そうに眺めていた。まったく彼女は一体どんな思考回路何だろうと考えながら頭を撫でて目的を教えてやる。

「ロドリオ村の慰問に持って行くんだ」
「ああ!きっと皆さん大喜びですね。デスマスクさんとお二人で行くんですか?」
「いや、後からサガも来るはずだ。君たちはこんな時間から海に行くのかい」

もうすぐ夕暮れの時間だ。こんな時間から海に行ってもすぐに暗くなってしまうだろうと言えば、アイオロスが夕日を見に行くだけだから問題ないと告げる。筋肉のくせにこういったところは女受けがよさそうだなと考えて、やはりこの男がそんなロマン溢れそうなデートプランを考えるはずもないと思いなおし、なまえの提案だろうと言うことで考えを落ちつかせた。

「気をつけて」
「はい!アフロディーテさんもお気をつけて」
「またあとで、アフロディーテ。なまえ、行こう」
「はーい!」

歩きだしたアイオロスのあとをぱたぱたと追いかけるなまえの小さな背中を眺める。ここから見ると、彼らの身長差が一層と際立って見えて、


「引率者みたいだな・・・」


そう呟けばいつの間にか宮から出てきていたデスマスクが吹きだした。







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