「・・・・・、・・・?・・・・?」

ぼんやりと目を開ける。
なんだか頭が重いしぐらぐらするし熱い・・・、それになんだろう、ふわふわしてる気がする。視界がにじんでいるのは涙だろうか。うう、なんか悲しくないのに涙が出てくる。ああ、関節が痛い。

「・・・えーと、・・・?」

風邪か?
これ完全に風邪の症状じゃないか?

あー、そっかそっか、風邪か。
把握。
えっと、それでわたしは何していたんだったか。・・・そうだ、給湯室でコーヒー・・・紅茶?・・・いや、コーヒーを淹れようとして、それで・・・倒れた?
倒れたのか、私は。

じゃあ、ここはどこだ。

ぼんやりと歪む天井を眺めながらゆっくりと考える。
天井の高さが違う。私の部屋じゃない。
壁の色も。

「・・・?」

痛む関節に風邪を感じながら横を向いて気がつく。

「・・・アイオロスさん?」
「なまえ」

自分で出した声が思ったより掠れていて驚く。
近くの椅子に座って本を読んでいたアイオロスさんは私の声に気がつくと、歩み寄ってくる。

「気分は?」
「なんかふわふわしますー・・・」
「熱が高いせいだ。39度もあったぞ」
「マジですか」

39度なんて高熱久しぶりだ、なんて能天気に考える。
そんな私の横に立ったアイオロスさんは厳しい表情を崩さずに口を開いた。

「どうして休まなかった。いや、どうして私に何も言わなかった?」
「平気かと」
「甘い!」
「っ!」

珍しく声を荒げた彼に反射的に縮こまれば、アイオロスさんははっとしたように私を見た。

「・・・ごめん」
「いえ・・・、もとはと言えば私が悪いんですし」

迷惑かけちゃいましたね、と苦笑すれば彼は首を横に振った。

「迷惑とは思っていないよ」

そっと私の髪を梳いた彼を見上げながら口を開く。
あー、喉がいがいがする。

「でもごめんなさい、アイオロスさん」
「・・・倒れているなまえを見た時心臓が止まるかと思った。次からは体調が悪いなら無理をしなくていい。・・・いや、無理をするな」
「はい」

そう言えば、アイオロスさんはようやく微笑んだ。

「私はおかゆでも作ってくるから、なまえはもう少し寝ると良い」
「え、でも」
「なまえ」
「・・・はい」

有無を言わせぬ声色の彼に何を言っても無駄だろうと察して、私は重い瞼を瞑った。


「おやすみ」

額に、やわらかな何かを感じながら私の意識は心地いい闇に落ちた。




雑用、風邪をひく
(サガ、風邪のはずのなまえが部屋にいないのだが)
(アイオロスがさっさと自宮に連れて言ったぞ)
(おい、危険じゃね?風邪で弱って抵抗できないなまえとあの筋肉を一緒にしておくのは)
(君が言えることではないけれど同意だよ)
(・・・様子を見に行こう)


(数分後私は騒がしさに目を覚ます)








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