「とか言うんですよ!!あの人、どんだけドSなんですか!!」


ばしばしと机を叩きながらうったえる。

白いカップに入った紅茶がゆらゆらと揺れているし行儀も悪いのだろうが、この際そんなことは無視だ。
隣に座っていたアイオロスさんも、さして気にした様子もなく自分の紅茶のカップを持ち上げ避難させる。



「ミーノスさんのドSイッチ!前髪!お人形使い!!」
「なまえ、それは貶しているつもりなのかい?」


あの後、無残にも破壊された床をとりあえず放置して教皇宮に案内をした。
床に関しては、ミーノスさんがお代持ちしてくれるそうで、シオンさんは一瞬顔をひきつらせただけで何も言わなかった。・・・が、その後もさんざんからかわれ攻撃を受け、私のHPはもはやマイナスだ!!

「うー、ミーノスさんのサディスト変態王子ー」

本当にミーノスさんのドSは筋金入りだと思う。

逃げ出そうとした私に最終的に謎の操り攻撃をしかけてきたし。
・・・一般人に変な技を使わないでくれと切に願う。
素敵眉毛おにーさんが止めてくれなかったら、あのまま芸人もびっくりなへんてこポーズを永遠ととらされるところだった。

「まったく酷い目にあったな」
「本当ですよ!・・・何を笑っているんですか、アイオロスさん」
「いや?皆考えることは同じなのかと思っただけさ」
「?」

笑いながらそう言ったアイオロスさんに首を傾げれば彼は尚も笑みを深めた。


「なまえ、あんまり男を甘く見るな」
「・・・?・・・、つまり?」
「分からないかい?」
「え」

背中に柔らかなソファを感じて驚いて目を見開けば、隣に座っていたはずのアイオロスさんはいつの間にか私の上に跨っていて。
いつも目に入ることのない高い天井をしっかりと見ることがかなっていた。

「アイオロスさん?」
「私といるときに他の男の話をするなんて感心できないことだと思わないかい」

そう笑いながら彼は私の頬を撫ぜる。

いきなり何だと彼に伸ばした両手は簡単に掴まれ頭上でまとめられた。



見上げればアイオロスさんはいつもの爽やかな笑顔とは正反対のにやり顔で。

・・・なんだ、私何か彼を怒らせる様なことをしただろうか。

「アイオロスさん、何を」
「黙ってくれるかい」

そう言って彼は私の首筋に顔を埋める。

ふわふわの髪が頬に触れた。

「私といるのに他の男の話ばかりなんて妬けるな」
「・・・!」

こ、これは・・・!

「なまえ、ちゃんと聞いているか?」


あ、
やばいやばい、これは

「・・・っふ」
「・・・なまえ?」
「ふふっ!あっははは!ちょ、そこで喋らないで下さいよ!」
「・・・・!」

唖然とした顔のアイオロスさんがよく分からなかったが、のそりと起き上がれば彼も自然と距離を取った。
そして相変わらず唖然とした顔のまま彼はぽつりと呟いた。

「なまえ、信じられないぞ」

いきなりなんだと彼を見ると今度は、アイオロスさんは眉を僅かに下げた。

「日本人は空気を読むこと得意って紫龍が言っていたけど」
「さあ・・・それなりでしょう」

日本人皆が空気を読むのが得意なわけではない。だからKYなんて言葉ができるのだろう。
そう思い肩をすくめながらそう言葉を返せば、アイオロスさんは首を振る。

「いや、今ほど空気クラッシャーな人間にあったのはこれが初めてだ」
「なんですか、私が悪かったんですか」

私は何もしていないと言えば、アイオロスさんはしばらく沈黙したのち私を見つめて口を開いた。

「・・・君、今まで恋人とかいたことないだろう」
「うわー!なんでわかったんですか、エスパー!!?」
「・・・いや」

そう言って目を反らしたアイオロスさんは、結局その日なんど私が問いかけてもそれを答えてくれることはなかった。





あわよくばその先をと期待していたなんてことは言えない
(アイオロスさんー!なんでばれたんですか!!)
(なまえが雰囲気クラッシャーの女神だからかな)






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