例えば、その感情を恐怖というのなら、恐怖とは喜びだろうか。だって私は今こんなにも恐ろしいのに、前にこうなったとき何よりもそれを歓迎して喜んだのだから。それとも同じ出来事でも状況が違ければ反応も変わるのだろうか。ああ、たぶんそうなのだと思う。だがもはやそんなことはどうでも良い事のように思えた。全ては過去でありもう私にも“彼女”にもどうすることもできないのだから。だとしたら、今私が考えるべきは一つだ。私が彼女なのか、彼女が私なのか。誰か、それを教えて。






ごぼりと泡が海面へと上っていく。
それに手を伸ばしても届くことなく、ただ私の手は水をかくだけだった。

苦しいのか、悲しいのか、もうなにがなんだかわからなかった。
違う違う!私は苦しいよ、息ができないのだから、そうにきまっている。

だれか、助けて、


死にたく、ない。



・・・ねえ、どうしてそう思うの?
私はこうなることを望んでいたではないか。


冥王がコレー様を浚ってからずっと、もう彼女の柔らかな微笑みを見ることが叶わないのなら死んでも構わないと。

アプロディテ様に海の魔女セイレーンに変えられ、地上を呪いながらもこの歌声がいつかコレー様に届いて帰ってきてくれるのではと期待もしていた。

でも、終にそれは叶わず私は沈む。
再び主に仕えることも叶わずに。

ならば死んだって構わない。

そうでないのか。


なにそれ?
コレーって誰?アプロディテって?


なぜ涙が流れるのだろう。
なぜ悲しいのだろう。
なにが?
死ぬのが悲しいの?

死ぬのは悲しくない。
いいえ、死ぬのは嫌。哀しいよ。
悲しくなど無い、それはただの甘え。私は、ずっとずうっとそれだけを望んでいたの!

私の名前はセイレーン、

違う


私はなまえ
私は、・・・・




ただただ暗いそこへ沈んで行く






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