Episode 0


空に輝く海面から、きらりきらりと差し込む光に目を細めた。

静かな空間。
美しくも何もない空間。

あいつの、

兄のいない、日々。

何かが、欠けたまま始まった、そんな日常。



ある日突然人魚姫とともに現れた女は、崩れた遺跡の上に座って、俺の名前を反復した。

「カノン?貴方は“追複曲”と言うの?」
「・・・俺は、カノンだ」

サガの追複のために生まれたのではないと、そう想いをこめて吐き出した言葉だったのだが、はたしてその心意は彼女には届かなかったようだ。


「追複曲、カノン・・・」


少女のように純粋な笑みを浮かべたなまえは、それに困惑する俺の顔など意に介さずに口を開いた。





「とても素敵な名前ね、カノン!」



その言葉が、妙に胸に響いたように感じたのは、多分間違いではなかった。



それが、俺と、あいつの
(初めて交わした会話)


 

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