「うるぁ!!!」

飛んできた白い球を思い切りバッドで振り飛ばす。おお、今度はホームランか!

「もう少し可愛い掛け声はできねーのかよ、なまえ・・・」
「うるさいですよ、デスマスクさん!本気って証拠です!」
「なまえさん、蟹に構ってないで早く走ってー!」
「てめえ、天馬座!!」
「はいはい、任せて、星矢君!」

キャッチャーのデスマスクさんのヤンキー座りが妙に似合っているな、なんて考えながら星矢君の声に一塁に走る。ふと飛んで行ったボールを確認する。うん、完全にホームランだ。これは私の大勝利決定だな。



・・・と思っていたのに。

「はい、なまえアウトですよ」
「えええええ!!?ちょ、テレポートって反則じゃないんですか!?」

悠々と笑顔で私に軽くボールを当てたムウさんに抗議する。野球でテレポートってどういうことだ。そんな反則技勝てるわけがないじゃないか!!ピッチャーのアルデバランさんは苦笑しながらこちらを見ている。


実をいうと、私がホームランを打てたのは彼のおかげだ。本当に手加減をしてボールを投げてくれた。アルデバランさんの前のピッチャーのアイオリアさんの時はひどかった。ミロさんのバットが折れた。意味が分からない。どれだけ強い球だったんだ。そして私の時は球を肉眼で確認することがもう不可能に思われたので、ハンデをつけてもらいピッチャーをアルデバランさんに交代してもらったのだ。

そうしてなんとか打ったホームランだったというのに!

「テレポートって・・・!」
「聖闘士式ベースボールなのでなんでもありです」
「それ私絶対勝てませんよね?」
「小宇宙を燃やしなさい」
「そういう問題なんですか!?」

さらりと言ってのけたムウさんに、納得いかなかったが仕方なく星矢君たちのところへ戻る。椅子に腰かけていた沙織ちゃんは私を見るとくすりと笑ってペットボトルを渡してくれた。

「ホームランでしたのに、残念でしたね、なまえさん」
「いや、あれは残念っていうか・・・うん、もうなんとも言えないよ」
「うふふ、ですがたまにはこういうのも良いですね」

彼女の隣に腰をかけて競技場を眺める。
今日は沙織ちゃんの提案でスポーツ大会を聖域で行っているのだ。たまには息抜きにもなるだろうし、下位の聖闘士は黄金と触れあえる良い機会になるだろうと、任務中の人を除いて全員集合しているのだ。そこで今朝私も誘われて参加をしてみたのだが。

「小宇宙を燃やせって言われてもなぁ・・・」

燃やす燃やさない以前に小宇宙の概念自体いまいちよく分からないと首をひねる。
身体の中に宇宙って言われても・・・。うーん。・・・あ、お腹がなったぞ。うん、でもこれは小宇宙関係ないな。

「まあ、そうヒョイヒョイと分かるものでもありませんから」
「まあ・・・、分かるようになれるように努力するよ」
「ならばなまえさん、その時は是非老子に師事を仰ぐべきです」

ちょうどホームに帰ってきていた紫龍君が言った言葉に笑顔で返す。

「考えておくよ」
「なんなら魔鈴さんのスパルタ修行はどうかな?同じ女の人同士だし!」
「いや、それならばカミュのほうがなまえさんと年が近いし良いだろう」

わらわらと話に加わった星矢君と氷河君に苦笑する。なんだ、私が修行をすることは決定しているのか?



「なんの話だい?」
「うぇっ」
「アイオロス!」


また背後からのしかかられて前のめりに潰れそうになる。
一瞬誰だと考え頭によぎった人物の名前を星矢君が口に出し、やはり予想通りだったかと顔が引きつる。

「アイオロスさん、重いので止めてくださいと何度言ったら・・・」
「で、なんの話だい、なまえ?」
「無視ですか」
「なまえさんが小宇宙を分かるように修行をしたらどうかって話だ」

氷河君もクールに私を無視してアイオロスさんに話の内容を告げる。

「なまえは小宇宙なんて分からないほうが良いだろう!!」
「なんでだよ?なまえさんがヒーリングとかできたら・・・」
「修行は危険だ。怪我でもされたらっていうのもある・・・けど」
「なんだよ、アイオロスが歯切れ悪いなんて珍しいなぁ」
「・・・考えてみるんだ、星矢。小宇宙を探知されたら後ろから抱きつけなくな・・・うわっ、何するんだ、サガ!」
「お前は一度自分の立場を思い知るべきだ、なあ、アイオロス?」

ふと背中が軽くなって振り返れば、眉間に青筋を浮かべたサガさんがアイオロスさんの首根っこを掴んで立っていた。

「サガさん」

アイオロスさんをぺいっと背後に押しやって私の頭をなでて微笑んだサガさんに笑い返す。

「なまえ、今度からこの筋肉が飛びかかってきたら容赦なく喉笛を叩け。いいな?」
「筋肉ってひどいなぁ・・・。一応仁智勇なんだけど」
「ていうか喉笛を攻撃ってところに悪意を感じるね」

くすくすと笑った瞬君に星矢君が黒い・・・と呟いた。うん、私も今何故彼は笑ったのだろうと考えていたところだよ、星矢君。私たち気が合うね。

「サガさんたちはサッカーやってきたんでしたっけ?」






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