真っ先に私の頭に思い浮かんだ犯人は、牡羊座の黄金聖闘士のあの人で。
というか、過去私が彼にやられたことを考えると犯人はもう間違いなくあの人以外にいないわけで。

ただ困ったことに、私の時と決定的に違うことが一つある。

「で、お前は誰なんだよ」
「カノン、口が悪いぞ」
「えー、と・・・、ざ、雑用ですかね」

私が小さくなったときは記憶や思考回路はそのままだったのだが、この二人は身長や年齢とともにそれらの記憶たちも年相応のものになってしまったようなのだ。これは実に困ったことだ。

「雑用がなんで俺のことを知っているんだよ!本当は教皇の差し金かなんかじゃないのか?」
「うーん、困ったな・・・」

サガさんはなぜかずっと顔色が悪いし、カノンさんはなぜかずっとイライラしているし。私一人に解決できる問題じゃないぞ、これは。くっそー、ムウさんも何が目的でこんなことを・・・!

「・・・えっとサガさん、カノンさん、今何歳?」
「・・・12」
「身長高!!・・・って、そうじゃないね、ごめん。そっか、12歳か・・・」


困った・・・!
16年前じゃないか!!というと、まだあの事件が起きる前なのかな?確かカノンさんは隠れて生きてきたって女官さんが話していたなぁ・・・。
ということは、今私が彼を見たというのは、彼的にいうとまずいのではないだろうか。実際にはそれが問題になる時はとっくに終わっているのだが、彼の中ではまだ終わっていないことになっているのだから。

「・・・手っ取り早いのはムウさんにもとに戻してもらうことだよね」
「ムウ?」
「ちょっと白羊宮まで行ってきます。サガさん、カノンさん、少し待っていてください」
「そ、それは困る!えぇと・・・、」
「なまえだよ」
「なまえさん、カノンは誰にも存在を知られてはいけないのだ。そう教皇にきつく仰せつかっている」
「シオンさんが?」

たぶん、今の彼なら何も問題ないとばかりに許可をしてくれると思うのだが、という言葉は頭を下げたサガさんによって阻まれた。

「や、やめてくださいよ、サガさん!」
「カノンが外に出ていたのは、私の我儘で、こいつは何も悪くないから、だからどうか教皇にはそのように伝えてほしい・・・!」
「ふざけるなよ、サガ!お前こそ何も悪くないだろ!!」
「お前は黙っていないか、カノン!」
「二人とも、私のために喧嘩なんてやめてっ!」
「ち、違う!」
「誰がお前のためなんかに!」

胸の前で両手を組んで、そう声高に言えば、カノンさんがなんとも恐ろしい顔で私にどなりつけた。おお、こわ。そしてそこまで否定されるとジョークでもちょっと傷ついちゃうんだぞ!

「冗談ですー。まず、落ち着いてください。とりあえず私は誰かに言いつけるとかはしませんから」

そういえば、サガさんはようやく顔をあげて私を見た。
はっ・・・!普段は格好良いのだけど、この子はかわいい・・・!!って、違う。そうじゃない。

とりあえず、あとでこっそりムウさんには戻し方を聞きに行こう。

今は、うん。そうだ。


「ご飯でも食べますか」


私おなか空いちゃいましたー。
その言葉に、双子は目を丸くして見合わせた。
く、食い意地はった女でごめんね!
そんな可愛くない女でごめんねっ!!

「お二人も夕飯まだですよね?パスタでいいですか?」


私は今晩サガさんとカノンさんに夕飯に招かれていたんだった。だとしたら、この二人もまだ夕飯を食べていないだろう。

とりあえず実際に幼児化させられた私だからわかる。こんな時は考えても仕方がない。とりあえず流れに身を任せることも重要だ。ということで、まずはご飯だご飯。腹が減っては戦はできぬ、と昔から言うじゃないか。

「あれ、・・・パスタは嫌いですか?」

なぜか固まった双子に、そういえば彼らの小さいころの好みなど私は知らないのだったと不安に思いそう声を変えると、二人ともびくりと反応した。

「き、嫌いじゃない!」
「・・・私たちも手伝おう、カノン」
「きょ、今日だけだからな!」

カノンさん、なんだかツンデレの空気を感じるぞ。

デスマスクさんに頂いたパスタの袋を抱えなおして、さくさくとキッチンのほうへ向かったサガさんとカノンさんのあとにあわてて続く。

「手伝いなんて今日だけだからな!わかってるのかよ、なまえ!」
「カノン、言葉遣いを正せと何度も言っているだろう」
「ふふ、サガさんもカノンさんも、ありがとう」

そう笑いかければ、やはり二人とも目を丸くして固まるのだった。




こちら聖域、またまた事件発生です
(とりあえず食事を食べたら白羊宮に特攻だ)

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