「あー」


東京は、あいにくの雨だった。

ギリシャの青空が懐かしい。あの乾燥した空気が懐かしい。
それから東京の汚れた空気とは正反対の聖域の綺麗な空気。

「うー・・・」

なんだろう、これは。ホームシックなのか?


そんなことを考えながら、テーブルに倒れこむ。
ティーカップがカチャリと小さく音を立てた。



ただいま私は絶賛休憩中である。ようするに、暇だ。

早朝、辰巳さんに働け!と言われたので、いつも通りに働いていたら正午過ぎくらいには休め!と言われた。
あの人は何がしたかったんだ。

よくわからない。よくわからないが、厳しくとも良い人だと思う。あと沙織ちゃん命。


「んんー?」

城戸邸の前を蒼い傘をさしたサラリーマン風の男性が通り過ぎて行った。

「いいなー、蒼、青、あお・・・」

サガさんの目の色だー。

なんて考えて、ちょっと恥ずかしくなる。

「・・・・・」


いち、に、さん、

もうしばらく彼に会っていない。いつも一緒にいたから、なんだか寂しいなと曇天を眺める。
うん、そろそろ帰りたいなー・・・。

「会いたーい・・・」
「誰にですか?」
「ふおおおっ!!さ、沙織ちゃん!!いつからそこに!?」
「今ですわ。なまえさんに電話です」
「私に?」






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